大洋ボート

博士の異常な愛情(1963/アメリカ)

博士の異常な愛情 博士の異常な愛情
スタンリー・キューブリック (2002/11/01)
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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 アメリカ空軍の狂信的な将軍が、飛行中のB52爆撃機の30数機に対して「R作戦」を指令する。その作戦は、ソ連に対する水爆による全面的な先制攻撃をさしていた。イギリス軍の将校ピーター・セラーズはたまたまその将軍の部下として派遣されていたので、必死になって将軍に作戦の中止を要求するが、こちこちの反共主義者の将軍は頑として聞き入れない。一方、知らせを受けた国防総省では、アメリカ大統領以下の緊急閣議がひらかれる。事態の打開を懸命にはかるが、つぎつぎに壁にぶち当たる。

 米ソ冷戦たけなわの頃につくられた映画だから、その分古さは感ぜざるをえないところか。米ソのどちらかが核ミサイルを発射すれば、報復の連鎖によって莫大な数の人命が喪われ地球は荒廃に帰してしまう、そういう危機感が強まった時代であった。現にキューバ危機もあった。原水爆を本格的に使用し、なおかつ自分たち一握りの支配層が生き延びることができるか、軍人や政治家の一部は真剣に、あるいは仮定という前提をつけながら、つきつめて考えたのかもしれない。この映画に登場するほとんどの登場人物が、そんなことを一度や二度は頭に浮かべたことがあるような顔つきをしている。B52の搭乗員でさえそうである。最初に作戦指令を耳にしたとき、搭乗員は冗談はやめてくれと取り合わないが、本当だと知ったときにも慌てふためく様子はまるで見られない。落ち着き払っている。例外はイギリス軍将校のピーター・セラーズのみで、将軍に刃向かうが、これまたどこか漫才の雰囲気がある。そうした全般の雰囲気(ブラックユーモアといわれる)もこの映画の持ち味である。ピーター・セラーズ(イギリス軍将校)以外の人物には、核という最終兵器に対するあっさりした諦めと、どうってことないと涼しい顔のポーズをとることが奇妙に合わさっている。

元ナチの博士(ピーター・セラーズ)は、水爆攻撃の熱狂的な賛成派。数千万の自国人命が失われても、大統領以下の支配層上層部は、地下生活をすることで安心して生命をまっとうできると豪語する。そしてナチ式敬礼をやりそうになって、その右手を左手が押さえつける仕草を繰り返す。アメリカ大統領(ピーター・セラーズ)に向かって「あなたはヒトラーと並び称される英雄になるだろう。」と賛辞を惜しまない。この博士の人物像が、スタンリー・キュウブリック監督の一番に造形したかった人物像なのだろう。それに、ピーター・セラーズが一人三役だなんて、関連資料に目をとおすまで気がつかなかった。まあ、怪演なんでしょう。

 現在においては、大国による核攻撃の恐怖は弱まっている。むしろ核の不使用による戦争の方が、世界中で勃発、継続している。それとは裏腹に、9・11事件はあったものの先進国と呼ばれる地域内においては、おおむね長い平和がつづいている。そうした現在を意識すると、この映画はやはり題材としては古いのかな、と思ってしまう。だが、先進国と途上国の二重構造の現在性を撃つことにも達しているとこの映画を評価することも、あながち無理ではないのかもしれない。平和と戦争、飽食と飢餓の二重構造を、ピーター・セラーズ博士よりももっと巧妙に立ち回って演出する支配者集団によって、世界は支配されているとしたら。
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