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沈没船

自作詩
05 /12 2019
紙の顔の男
棒杭のように
標識のように突っ立っている
夢とうつつのあわい
沈没船のデッキに突っ立っている

ゆるやかな潮の流れに皮膚を
少しずつ少しずつ浸食させながら
境界を曖昧にしながら
潮に抗するでもなく委ねるでもなく
突っ立っている紙の顔の男
手綱らしきものを右手にぶらさげているが
遊び相手の犬は居ない

どうしたことか
滅亡しても滅亡しきれない
安らかに死なせてくれない
いたずらまがいに
天国のだれかが打ち込んだ宿運の火の楔か
潮に浸されてどんどん縮小していくものがある
膨張するものがある

わたしのうつつに移り住む沈没船
潮の匂いのなかの異臭
俄かに暴れ出す船の全体
わたしのうつつを根こそぎ持ち去ろうとする邪悪
光のように泳ぎまわる烏賊
夢のなかでも紙の顔の男はわたしを知らないだろう
まさか

紙の顔を皺くちゃにして懇願するでもない
間近でじろじろ見ても
はるかにとおい紙の顔の男
潮に侵されながらただゆらゆら揺れる海草の紙
ただゆらゆら揺れる
軽蔑するように




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seha

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