大洋ボート

黒い影

  あるいはきな臭さを発散させる黒い影どもがわたしを興味深げに上目遣いに眺め涎さえ光らせて少しずつ距離を縮めやがて取り囲む。しかし彼等のほうから近づいたのではなくて寧ろわたしの恣意の所作が彼等を近づけさせたというべき成り行きと自覚するが長年にわたるその習癖の持続はわたしにとって「初期」と呼べる時期におけるその所作の実感を忘れさせいつの間にか攻守ところを代えた観がある。そういえば彼等のとおさや動き過ぎて不鮮明なその映像に苛立ちとじれったさを覚えさらには空無の塊に連続的に拳を突き入れてわれに立ち返ったときのような徒労と力の不可抗力的な減衰感に陥ったことくらいは記憶にある。あるいはきな臭さを発散させる黒い影どもは当然ながら胡散臭くその実相を毛細血管の隅々までも暴露してみたいという欲望に駆られての手招きするようなこちらからの接近であったのか。あるいは無意識なままの接近は寧ろ彼等とのわたしの同化を促進させるのではないかとの危惧は十分にわたしにはあったがわたしは彼等への意見表明をあえて行わなかった。わたしはわたしの意見を鍛え上げるためにのみ彼等に接近したつもりでもあったがそれというのも彼らの内包するであろう統御不能のエナジーを剽窃したいという欲求をどこかしらに蔵していたのだ。彼等の有するであろう胡散臭さやエナジーがわたしの意見にどういう経路で蔦のように絡まりあるいは貢献してくれるのかという見通しもないままに。
    彼等もまたわたしをとりかこんだまま動かず沈黙を維持し寧ろ彼等のほうがわたしの意見表明を待つかのようでありそのさまはまるで忠実な下部でありながらときにはその様が露骨になることを怖れるかのようにあらぬ方角に視線を向けたりもするが本心はしっかりした梃によって中心を支えられながら「悪事を為せ悪事を為せ!」とわたしを督促するのだ。わたしの意見とはわたしのリズム及びわたしの暴虐と一緒くたになった見かけではあるものの両者はわたしのなかで分離可能であるらしくわたしは後者のみをとりだしてより大きな黒い影とも仮に呼ぶべき「全体」そのものの無慈悲によって中断されたかに見えるまたわたし自身の臆病風によって中断されたかに見える不用品として扱われかねないそれを彼等黒い影どもの唆しに便乗することによって賦活させようとするのではないか。「悪事」の棒切れを噛もうとするのではないか わたしは色気に半身を乗っ取られている脳内のとある部分の痺れによって一時的にせよ堕落してしまっている 黒い影どもの発散させ瀰漫させる大げさな音たてる摺り足と上目遣いと塗料のように盛り上がった涎 それら下品さのことごとくがわたし自身と寸分ちがわないのではないかとの疑念に逢着する 凝視によっては何も見破れず解決しないことを飽き飽きするほど知りながらも黒い影どもへの凝視を依存症としてやめられず停滞が同時的に始まっている その凝視の過剰さのなかでにわかに変成してしまったわたし自身に疑念を呈することは忘れまい。
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