大洋ボート

ベルリン、僕らの革命(2004/ドイツ)

ベルリン、僕らの革命 ベルリン、僕らの革命
ダニエル・ブリュール (2005/10/28)
レントラックジャパン

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 題名からくるイメージと、主演が『グッバイ、レーニン』のダニエル・ブリュールなので、ベルリンの壁崩壊前後のことが描かれるのかと勝手に考えてしまったが、ちがっていた。ダニエル・ブリュールと彼のルームメイトは住居侵入の常習犯。けれど窃盗はやらない。大金持ちの邸宅に忍びこんで、模様替えをしたあげくに贅沢を批判する手紙を残していく。つまり二人は、ある種の反体制運動の実行者なのだ。さらにルームメイトの恋人のユリア・イェンチ(『白バラの祈り』では主演)も贅沢品の不買運動を公然と行う運動家であるが、彼女は二人の行為についてはまったく知らない。そういうユリア・イェンチにダニエル・ブリュールはひそかに好意を寄せていて、ルームメイトの旅行中に二人は急速に接近する。

 お互いが相手の悩みや秘密を知ろうとする、少しずつ、あるいは劇的に知ることでより親密さを増していく、そして行動を共にする。こういう過程が若い男女をたちまち恋人関係にしてしまうのはよくあることだが、丁寧かつスリリングに描かれる。ユリア・イェンチは交通事故を起こして高額の賠償金を何年も支払わせられる決まりで、その相手の大企業の社長に一泡吹かせてやりたくてうずうずする。ためらうのはむしろ男の方だが、幸いにして社長宅は留守の状態だ。なし崩し的に二人しての住居侵入となり見事に「模様替え」に成功する。

 だが忘れ物をとりかえすために数日後、再度侵入したときに、帰宅した社長とはち合わせになってしまう。ここは緊迫度を加える場面で、二人はいったいどうするのだろうかと鑑賞者は固唾をのむが、結局は旅行帰りのルームメイトにも助けてもらって、社長を拘束しての道連れの逃避行となる。だが男たちはたえず、社長を抹殺することを考えている。社長も身の危険を感じてか従順だ。ストックホルムシンドロームというのか。

 若い男女三人と社長がしだいにうちとけて仲良くなる過程が、映画としてはいいのかもしれない。若者たちはお荷物の彼を、できれば口封じを約束させて解放したいと願っているし、社長も安全のために信頼をえようとするからで、どうなるか興味をつなぎとめられる。だが私は、個人的な見方かもしれないが、不満だった。1968年の頃、社長は学生運動組織の幹部だったことを打ち明けたとき、三人はヤニさがった顔つきになるところが、私としては厭だった。社長もなつかしさを抱いてか、三人の行動を支持しはじめる。三人は義務のように、転向や大金持ちであることや搾取について、社長を糾弾する問いつめ方をするが、社長はかえって堂々としはじめる。「子供にいい教育を受けさせたかったからだ」「俺はルールに従ってやっている」と言う。また妻はコミューンのメムバーだったとも。コミューンとは、ここでは男女の共同生活を指していて、乱交をもふくんだいる。三人はそれ以上の突っ込みはしない。

 若者三人は、自分たちが六八年革命の継承者であるとかねてより自認しているらしいが、社長の賛同をえて、その意を強くしたのだろう。小規模な反体制運動や課題ごとや地域の運動の起点を六八年革命にもとめるのは別にかまわない。だが日本の六八年革命をふりかえると、あれは革命の挫折でもあったのだ。参加者のひとりひとりが、たぶん七〇年代以降内心で革命を侮蔑し、押し殺した。行き場のない力をもてあました人もいたにちがいない。また六八年革命は、嘘を嘘と承知であえてアジテートするところがあった。ヨーロッパでも事情はたいして変わらないだろう。私としてはそれらを社長の口から語ってもらいたかった。若い世代にも、単にあこがれだけで六八年をふりかえって欲しくはないものだ。

 もう一つの興味は、男女三人の恋愛関係がどう決着するのかということだが、省略する。


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