大洋ボート

さくらん

 子供の頃、吉原遊郭に売り飛ばされた女性がやがて花魁(おいらん)にまでのぼりつめる。そのはなやかな舞台で恋の炎に身を焦がす。主演のひぐらしに土屋アンナ。監督は写真家の蜷川実花。

 原作がコミックということで、蜷川監督はおもいきった映像を見せてくれる。華麗で幻想的で幼児的で、というべきか。吉原から見た外の世界は憧憬をこめた満開の桜。花魁のきらびやかだが閉じこめられて自由のない身は鉢のなかの金魚、というように象徴させる。遊郭の日本家屋もそれとは理解できるものの、とてもあんなものじゃないだろうと思わせるくらいにデフォルメされている。襖など目に付くところに赤と金色を中心にした絵模様が貼られてある。金魚はまた、吉原の出入り口の門の上部にも透明ガラスの器に大量に入れられてある。花魁が身につける着物も赤が中心。かんざしは金色、というように書けばきりがないくらいに極彩色が採り入れられている。それらが女優のアップよりも重要度を増すくらいにアップされ、あるいは前景に映されて後方の映像を見させる、という大胆な構図が随所に採用されている。そして極彩色をより生かすために家屋内のべったりとした暗色が対比される。つまりは柱や格子の影の部分であり、部屋の内外の奥所の照明の当たらない部分だ。これが映画だと映画独特の味わいのある暗色となる。いいところに着目したものだ。

 こういう極彩色がえんえんとつづくと少し飽きてくるものだが、さびの部分もちゃんと用意してある。逆光の位置にある家屋をはさんで、夜空に浮かぶ三日月。この夜空が正確に藍色で、家屋の暗色と明確に区別されている。わずかな時間しかこの映像はないが、心地よいものだった。映像全体の流れはたいへん気に入った。

 物語はどうか。いかに外観が華麗でも、そっけなく言ってしまえば管理売春の世界だ。不特定多数の男性と性交渉をもたねばならない。そのなかから気に入った相手を自分から選び取り、あるいは情念の発展によって選び取らされる。そこから娼婦の性愛の純粋化が起こるのだろうが、こういった物語は何回も焼き直しされて出現する。今回の場合は、細部の特徴はほとんどなく、その点では興味は湧かなかった。原作がコミックであることから、細部の特徴は原作の絵にあるのかもしれない。そうするとその点が欠点ではないとすると、やはり出演者の土屋アンナや木村佳乃の演技ぶりに不満が残るところなのだろう。懸命にやっていることは買いたいが、ぎこちない。八方破れの情念をスケバン的な雰囲気をからめて発散させようとするのかもしれないが、未消化な気がした。

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