大洋ボート

レバノン(2009/イスラエルその他)

レバノン [DVD]レバノン [DVD]
(2011/01/07)
ヨアフ・ドナ

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  反戦・厭戦的メッセージのこめられた映画だが、これがイスラエル製作になるということが頭からはなれない。この国は建国以来周辺国と常時戦争を行ってきた国であり、そのことごとくに勝利してきたいわば軍事大国であり、現在もその様態は変らない。面積は小さくともその領土保全と国内秩序は周辺国への軍事的優越性抜きにしては語ることができない。だがこの国にも言論や表現の自由があるからこそこういう映画が作られて、諸外国へのメッセージとして成立するのであろう。この国の半面の寛容さか。この映画一本が自国の政策に変更を加えることなど、わたしには絶望的に見えるが、どの国にも戦争を嫌い、なじめない人がいるという当たり前の事柄が、またそれを伝えようとした映画製作者の熱意は感じられた点ではよかったと思う。ただ、イスラエルという国の人々が、とくに国家指導者をふくめて。ここで描かれたような心優しい人ばかりではないだろうということは、記しておきたい。作品そのものからの感想ではないにせよ。
  舞台は大部分が戦車内部で、四人の兵士はそこで二晩を過ごすことになる。暗く、息苦しくもあり狭苦しくもある。外の状況と風景は戦車砲の照準レンズによって戦車内部にまた視聴者に伝えられる。レンズだから円形で外周部は暗部で、これまた狭苦しい。(砲身が動くたびに機械音がともなう)見たところ十人以上の歩兵がゆっくりと進行し、それを戦車一台が一緒に進むという構図だ。総指揮官が歩兵とともに外部に居て戦車に連絡を寄越し、ときどきは乗り込んでくる。戦車兵は新人か経験の浅そうな青年ばかりで、とくに砲撃担当者は発射ボタンを押すことを頑固なほど拒む。思想的にか感情的にかわからないが殺傷を嫌うからで、このことが結果的に歩兵や戦車そのものにも損害をこうむらせることにつながっていく。戦果の有無が戦況に直結するということになるが、外にいる歩兵の立場からすればなんとも頼りない戦車なのだ。ヘリコプターで搬送するまでの間、歩兵の死体を戦車に載せたり、制圧が完了したはずの街で「テロリスト」との交戦があって民間人が殺されたりと、戦争そのものの場面の連続でありながら、戦車内部での兵同士の会話が大事にされるという構図になっている。
 殺したくはないが自分も当然死にたくない。死にたくないなら相手を先に殺せばよい。また砲撃を繰り返しながら全速力で逃げればよい。大きい視点に立ったときの戦争の残酷さでありながら、兵ひとりひとりにとっては恐怖との戦いだ。それはよくわからせてくれる。ようやく戦火から逃れられたとき同乗していたシリア兵捕虜とのあいだで安堵の表情が交わされる。わたしも肩の荷を降ろした気分になった。
  ★★★

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