大洋ボート

夜空にかかる顔

微風さえ囁きかけてきて闇は均質である ほのあたたかくさえある 何処までも気概の直線を延伸できる気がする その既定の方向に身を委ねて蝶のようにふわふわと飛んでいけたら死と幸せを一度に掴み取れるかもしれないなどと一瞬願ってみることもごく自然な成り行きでなんら咎められるいわれはない あの雲ひとつなくあっけらかんと晴れ上がった空がわれわれをやれるところまでやってやろう  やってやれないことはないという気にさせたように だが巨大な岩礁がある われわれの身の回り前後左右にあるのではなくそのまっただ中にわれわれは閉じ込められている 別に頭蓋骨が締め付けられもせず血が流れもしないのは気泡があちこちにあってそのひとつにわれわれが閉じ込められているからで その気泡のひとつもまたあまりに巨大なのでその終わりつまり岩礁がふたたびはじまる地点もとおすぎて視認できない そのリアルな風景も目にすることはない まして気泡を内包した岩礁全体が何処で終わるかその表面がどんな相貌か 晒す空間はどんな表情か 星は瞬くかなどと空想してみてもはじまらない 気がとおくなるだけだ だからこそ何処までも伸び広がる闇と錯覚するのもごく自然な成り行きといえるが また気泡内で棲むことの幸せを感得してもなんら咎められるいわれはないが 肝心なことは延伸しようとするあるいは既に延伸させてしまった後にわれわれが忘れてしまった 諦めてしまった直線とそこに纏わりついた情愛やら羽根やら腸やらのもろもろを収束することだ巻き戻すことだ 

闇とみえるものに向かって直線と気概を外へ延伸させるのではなくその中心部 岩礁とその内部の気泡の二重の中心部に位置すると仮にも見做されるわれわれ自身に立ち戻ること 中心部の芯部に直線と気概を向かわせることが闇そのものの解明にはるかに繋がるのではないかとの希望をでっちあげるのだ 勿論無謬性・良質性ばかりが引き上げられるのではない 語るに落ちる 語るに憚られることがわれわれの軌跡には無数にあって 涙や歓びよりも先に突きつけられるものがあって たとえば腐ったバター こわれた車輪 後悔に後悔をかさねても修正不可能でどんどんずれて行って人間ではなくなるのではないかとの危惧の水面に顔を浸さざるをえなかった局面など 激しい静電気のようにわれわれを狼狽させ 顔がひん曲がるかと思えるほどにわれわれを紅潮させるが また地団太踏むことにも疲れ飽き飽きさせられるが 無謬性・良質性がまったくないのではないとかたくなに信じ込みたい だが全体を継承できるものではない 腑分けして良質性のみを取り出して未来に道連れにすることなど言葉のうえではありえてもきわめて困難である あまりにも入り組んでいてあまりにも瘴気が立ちこめていてわれわれを後ずさりさせる それがごく自然な反応であって ましてやあっけらかんとして晴れわたった空などに戻れるわけもない すべてを岩礁を視認するという抽象的未来に委ねて進んで行ったはよかったが 多少のことはやれたとしてもやれるところまでしかやれなかったのだから しかしわれわれ自身の能天気を思い出すこと 忘れた快感の紐を探り出すように 無性に思い出したくなることもごく自然な誘惑である 血にまみれたわれわれの顔の断面図が天空に大きく掲げられるときには 罪と汚辱の厚い皮膚の下にあるしぶとい憧れから目をそらすことも困難であるから 

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