大洋ボート

約束の場所へ

約束の時間には遅れるが
待っていてくれる人はいない
約束の時間には遅れたが
待っていてくれた人は
待っていたことさえ
忘失の屑籠に投げ捨ててしまったので
ことさら非難されることもない
紙風船をふくらませたり
自傷行為にも似せて
部屋中を転げまわることもない
約束の場所はいつもある
影のように寄り添ってくれる
数百メートル先に用意されていて
鬱蒼とした森のなかの太陽
扉が開きっぱなしの映画館
わけのわからない映像が
滝のように垂れ流されつづけて
わたしはすでに奥深く歩み寄っている

おまえの微笑みは見ちゃいられないんだよ
黄色い葉っぱのようなお人好しと
未整理な愚劣の地図
何かを信じ込んでいるポーズ
気持ちよさそうじゃないか
おれは気持ち悪い
どんなことにもついていけると
窃盗で手に入れたぴかぴかの鎧のように
自負と覚悟のほどを撒き散らすが
家族に囲まれた幸福な父なのか
おれが相手だからそんな態度を取れるんじゃないか
おまえ一旦は後退したことは事実だろうが
それを無かったことのようにして
語ろうとしないのは腑に落ちない
無難なコメントくらいが関の山
おまえが語ろうとしないのは語れないからだ
それでもヒントと合鍵は隠し持っているという自信と希望
ちゃんと顔に書いてるぞ ナルシストめが!
おれを相手にするときの四畳半の優越感
若さとありあまる命がぷんぷん匂うじゃないか
ちなみにおまえよりももっと
匂わせる奴をおれは何人も知っているがね
おまえ一旦は後退したことは事実だろうが
廃墟が同時に希望でありうる場所に立った
ひとつの時代がおまえにそういう課題を与えた
おれにも胡瓜にもたやすく想像がつくが
自慢の種にすることじゃない群れだよ四畳半だよ
おれにも世に言うところの良心くらいはある
灯台を小さくして掌にのせて
まずはつき合わせることが礼儀のつもりだったが
おまえはおれのそういう志向を見抜いた
おれは腰が低かった
それだけで満足して酔いの舟にたゆたうばかりで
会話をすすませることを放棄する
おれが話す場面じゃないんだ馬鹿が
リラックス気分を長引かせるじゃないか
帰郷して山焼きの煙を愉しむように
おれにはおまえに追随する用意がなくもなかったががっかりだ
おまえは新しい仲間にはなれない
どうしてかな?ととぼけて問いかける
お人よしと愚劣のどんぐり眼も
おまえ自身ほどにはつき合えない飽きが来る
小便とわずかな血で描かれた地図
苦笑させるぜ
おまえはおれの良心と礼儀を侮辱する
おれなどいなくても露ほども痛まないと嘯きたいんだろう
おれは孤独だ孤独だと撥ねのける
それもだれかの物まね
ひとつの時代がおまえのそういう悲喜劇をつくった

待っていてくれた人はいなくなった
待っていてくれた人は死んだ
わたしは歩むことをやめない
歩むこと自体ですでにその人の味方になる
わたしはわたしでなくなる入れ替わる
砂が熱くなって飴のように曲がり
握りしめろと教唆する
約束の場所に向かって
わたしは歩むことをやめない
今も影のように寄り添ってくれる
待っていてくれた人
亡骸の抜け殻
わたしは語らない歩むときも歩まないときも
歩まないわたしのほうが人々にはよく見えるだろう
鬱蒼とした森のなかに太陽を探しに行く
扉が開きっぱなしの映画館の
わけのわからない映像の洪水のなかに
亡霊となってさまよう待ってくれている人
その目配せに出会いに行く
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