大洋ボート

    解明されて解明されてなお、にじり寄らなければならないのか。窓から首をさしだすように。青空の上澄み液を呑み干すためではない。認識を固め高めるための実感が足りないとでもいうように。嘗ての悪食への共感を復活させるように。仲間同士の目配せも借りて。そのとき人魚の跳ねる尾鰭。二番目の故郷を僭称させる。解明されて解明されてなお、にじり寄らなければならないのか。窓から首を何食わぬ顔でさしだすように。駆け出す靴音、遅れを取りもどそうとして。あっけなくも折れる鳥の脚。
  街の底からふつふつと沸きあがり停滞する霧、窓と首筋を侮蔑的に舐めてくる犬の舌の霧は、たとえば風力計の回転が示す天候の循環などではなく、わたしの肉体の深部に宿った棘で、そこから瀰漫した窓の外の仮像。それでも窓から首をさしだす。前例を踏襲する儀式のように、他に方法を知らぬかのように。どうにも解釈に困って扱いかねて忘れかけられている廃屋の記憶。それでも棘は軽微、まだまだうぶだから、はじめからやり直すという芝居めいたものをわたしなりにでっちあげて、実感の復活にいたずら半分に邁進するのか。それでも棘は軽微、それでも他人事のように霧に向かって上ついた気分で窓から首をさしだし、間抜け顔を人目に晒し。これらははじめての営みではないということにおいて、わたしにとっては大部分「解明」されているのであって。
  霧のなかの熱い粒。貨物船。その熱さを握りしめる覚悟を閃光のように問われる。惨劇にも似たあるいは惨劇がうすめられた霧の熱さの幹。粒のひとつひとつ。骨と肉がばらばらになってそれでも共通の意思に支配されるように痴呆となって闊歩する。紙の柱の群れ。それら霧のなかの幻影と、霧のなかの実態とにわたしは異様に接近しつつもどうしようもなく隔離されるのか。たぶん、わたしの意思が働いている。まるで意識がそっくり入れ替わったように、霧のなかの棘と肉と骨と紙の柱が合体したひとつの大きな滑らかな肌を撫でる。宇宙を見あげて丁寧に撫で接吻する。恍惚をもとめて。しかしそれでいいのか。恍惚のすぐ近くにさらに恍惚があるのかは「解明」されていない。わたしは滑落したのか、詐術にとっくに刺し貫かれたのか、それともとおい幻を子供のように憧れるのか。儀式に過ぎないのか。
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