大洋ボート

雪に願うこと(2005/日本)

雪に願うこと プレミアム・エディション [DVD]雪に願うこと プレミアム・エディション [DVD]
(2006/11/10)
伊勢谷友介、佐藤浩市 他

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  私は犬が苦手だ。特に図体の大きい犬になると噛まれそうな気がして少し恐怖感がわいてきて、身体が緊張する。飼い主がしっかりと紐を握っている様子を視認するとやや安心するが、それでも恐怖感がさっぱりとぬぐい去られるわけでもなく、身体の芯には残っていて緊張から自由ではない。犬のほうでもこんな私に怪しげなものを体感するのだろうか、すれちがいざまもっとも距離が近接するときともなると、飼い主の紐をふりきって私につっかかってきそうなことがときどきある。飼い主は慣れたもので紐を引き寄せて犬を私に近づけまいとして事無きをえるのだが……。こんなことを書くのは、犬にかぎらず動物の側において人間を馴染みやすさの点で識別する能力が本能的に備わっているのではないかと私に思わせるからである。私の恐怖心なり警戒心なりにかぎらずともよい、人間によってひとりひとりちがうであろう身体の動きや匂いのなかから動物は好ましい種を選別する、そして好ましさで選別された人は幸福感をえられるのかもしれない。この映画ではそんな考察を心地よく想起させる場面があって、映画の転換点になっている。
  伊勢谷友介は東京で事業に失敗し、十年以上音信を怠っていた故郷の北海道に逃げるように帰ってきた。兄の佐藤浩市はばんえい競馬用の競走馬を飼育・管理する厩舎の所長である。佐藤はいったんは故郷を捨てた伊勢谷にたいしわだかまりがあり、伊勢谷もそれを知っていて、二人は互いになかなか打ち解けようとはしない。失意を抱きながら兄の厩舎の仕事を手伝う伊勢谷。だがそこで先に書いた「転換点」が伊勢谷に訪れるのだ。馬の世話を職員とともにするのだが、先輩職員が「ウンリュウ」という馬が自分たちよりもはるかに伊勢谷によくなつくことを発見する。戸惑うと同時に伊勢谷はたいへん気をよくする。視聴者もここで人間関係の重苦しさがたちまち氷解するような爽快感を味わうことができる。残念ながら、これは職員のセリフによるもので、つまりは映像によって直接馬が伊勢谷になつく様子は丹念には追われてはいないが、そこはやはり映画作法としては困難なのだろうか。
  かつては東京で華々しい活躍をした伊勢谷だったが、仕事仲間が血相を変えて追いかけてくる惨めさも味わう。気のいい職員たちに囲まれての居心地のいい逃避場所にしか過ぎなかった厩舎が「馬になつかれる」ことを発見してから、伊勢谷に前向きな姿勢を与えるのだ。仕事というと範囲は広いが、なにかしらこういう小さな幸福感をその現場からえられることが、もしかしたらあらゆる仕事にはあるのではないかと思わせる、この映画の美点だと思うのだ。
  職員は懸命になってうまの世話に取りくんでいる。騎手の吹石一恵や「まかない婦」の小泉今日子もふくめて。その懸命さを伊勢谷は「転換点」を通過することによって自分もより積極的に仕事に取り組むことによって理解し、また懸命さを共有しもするようになる。ばんえい競馬の競技の模様もわかりやすい。さらに口といわず全身から湯気を噴出して雪原を走る馬、厩舎の屋根からびっしりと垂れ下がる氷柱、これらの映像もいかにも雪国らしく爽快だ。
  ★★★★


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