大洋ボート

アウトレイジビヨンド

  前作『アウトレイジ』の続編で、あいかわらずの暴力団抗争を描いている。冒頭では港に水没した車が引き上げられ、そのなかから暴力団担当の刑事と女性の死体が発見される。山王会の仕業と直感した刑事の小日向文世など警察組織は、警察への挑戦と受け止め、危機感をつのらせて山王会を弱体化させるために陰謀を画策する。山王会と関西系暴力団花菱会とを競わせ、抗争にもちこませようとするのだ。
  前作に比べてセリフが多めで、ハードボイルド系の小説を読むような空気が感じられる。漁夫の利をえようとする者、抜け駆けして自分だけ助かろうとして逆にそれが裏目に出て滅ぼされる者、少々不利でも和睦して生き残りをはかろうとする山王会の組長の三浦友和などなど、それぞれの立場によって動きと運命が分かれる。ひとりひとり(または少人数のグループ)に順番に焦点が合わさっていき、殺されることによって区切りがつき、次の人間に焦点が移るという仕組みになっている。組織の勢いがいいときは団結が自然に形成されてそこに安住していられるが、勢いが衰退すると運命をともにせずに自分だけはなんとか助かりたいという心理と行動が生まれる。だが所詮は大きな組織に対しては一人の人間は無力でしかない。激しい暴力のなかで、こういう寂しくも冷たい人間像がつぎつぎに描かれる。これも前作と同じだが、最後のほうでは人同士のつながりをつくりだし維持しようとする動きがビートたけしや中野秀雄から生まれる。
  1970年代の『仁義無き戦い』シリーズは、実際のやくざの話をベースにしてはじめて製作された作品群であったが、そこには反社会勢力にあってもひとりひとりには共感すべき言い分があるのではないかという社会にたいするメッセージがあった。けれどおそるおそるである。脚本家や監督や俳優陣にそういう緊張感とぎこちなさ、またそれを突破しようとする情熱が感じられた。だがいまどきでは時代的背景にもとづいたそういう緊張感は皆無である。「実際のやくざ」は数限りなく映画化されることで映画(芝居)の一ジャンルとして定着したので、俳優も監督も「これは芝居だよ」と余裕を持って作ることができる。芝居ならチームワークを維持することと他の俳優とがっぷり四つに組むことに専念すればよく、社会や観客の非難など気にせずによい。それどころか俳優陣はいずれも楽しんでやっているように見える。また見る側もそういうものだという割りきりが、いまどきは定着している。
  北野武監督はあいかわらず暴力にこだわりをみせる。群像による連続殺人を見せられるのだが、セリフによるおちついた「説明」のあとの銃殺や刺殺やリンチやらが観客が思うよりも一瞬早いことが、身体にすこし震えが来て魅力的かもしれない。といっても苦笑をともなうようなひねった暴力場面は今回は少なかった。某俳優がバッティングマシンによってリンチを受ける場面がそれにあたる。俳優のなかでは小日向文世や加瀬亮が目立ったが、これは見る人によってちがうだろう。
  くどいようだがもう少し。娯楽映画として見るのもよし、組織や人同士のつながりよりも自分ひとりの「生き残り」で精一杯といういまどきの社会の反映として見るのもよし、という映画だ。「逃げどく」は許さないという義侠心も最後にある。
   ★★★★

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(2010/12/03)
ビートたけし、三浦友和 他

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「アウトレイジ ビヨンド」★★★ ビートたけし、西田敏行、三浦友和、加瀬亮、 松重豊、小日向文世、高橋克典、桐谷健太、新井浩文出演 北野武監督、 112分、2012年10月6日(公開) 日 2012.11.06 07:32
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