大洋ボート

忘れられた航海

扉のノブの金色
団子鼻
汗の粒がきらめく
かろうじて支えるものがある
板が軋み
蟻の一穴から覗きこむ
熱病の影の群れ
蔦の帽子
濁流に翻弄される鉛の船
生あたたかい風が吹いてきて
変質者の哂いをわたしは返し
さらに生あたたかい風を掻きあつめては
鉄板で炒りなおす
影から手足が柳の葉のようにうっすら浮き出た
新月の航海がなつかしく
冗談ばかり話していたうしろ姿
風に弄られっぱなしの長い髪は言葉ではなく
あなたは何を想ったのでしょうね

椰子の林の火事から
命からがら逃げてきた
あの頃は足が軽快だった
それが記憶と言えるだろうか
ひとりよがりの華奢で透明な城を造っては
仲間とともに道路に運び
車輌に轢かせては
さらに何回も造りなおした
わたしたちは事あるごとに快哉をあげたが
運転者は誰一人
城にもわたしたちにも気がつかなかった
それが記憶と言えるだろうか
やがて城は忘れ去られ
手つきと顔つきだけを弟のように引き摺った
それがわたしの記憶と言えるだろうか

扉のノブの金色
団子鼻の汗
長い菱形の磁針
かろうじて支えるものは
やがて支えきれなくなるだろう
蟻の一穴から覗き返しわたしは侵入し返し
熱病の影たちが
わたしを殴り倒しわたしを犯し
罪過の帽子を押しつけて
狼色の股を広げて
夜空にグロテスクに遁走するとき
わたしがもし生きていたとしたら記憶になりうるだろうか
真実は吐けないにしても
あなたを再び見つけられないにしても
なつかしい新月の甲板で
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