大洋ボート

深呼吸の必要(2004/日本)

深呼吸の必要 [DVD]深呼吸の必要 [DVD]
(2005/01/28)
香里奈、谷原章介 他

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  若い男女5人が沖縄地方の小島に集結してさとうきび収穫のアルバイトに汗を流すという話。彼等はそれぞれが応募を見てやってきたのでお互いを知らない。また収穫の期限があって、それまでに作業を終えないと工場がひきとってくれないという事情があってだらだらとはしていられない。そんな厳しい労働のなかでやがて彼等のなかに連帯感が形成されるということが映画の主題のようだ。連帯感に難をつけるつもりはないが、ありふれた感じはある。また単純作業のきびしさがもうひとつ伝わってこないのが私としては不満だったが。
  さとうきび畑を所有するのは老夫婦でアルバイトのメンバーもその家で宿泊するが、老夫婦もときどきは作業に参加するものの主に作業を指導するのは彼等二人に依頼された青年の大森南朋である。大森は老夫婦との縁故はないようだが、その作業と指導の的確さは信頼をえていて、沖縄のみならず農作物の収穫の時期になると全国を飛びまわって農家の支援に当たる。また若い人たちへの対応も慣れている。作業のきびしさがやがては楽しさに変わることを若い人たちを見てきた経験から知っているのだ。また彼は沖縄のような自然豊かな地方へあえて来る人には都会における挫折体験が多くあって、それを忘れるために新天地を求めてのことだということも併せて知っているようだ。その一方で彼は自分の幸福を感慨深げに語り、もはや都会で組織の下で働くことはできそうもないと言う。大森の言葉には参加したメンバーはそれぞれに思い当たることがある。図星をつかれた気にもなる。作業に油が乗ってきた頃で、作業を終えた夜に宿泊する家の縁側で語り合うのだが、メンバーのひとり成宮寛貴は嫉妬も交えてか反発する。成宮は甲子園に出場してノーヒット・ノーランだったかの記録を作った球児だったが、その後大学に進学してつづいて野球をするが肩を壊して選手生命を絶たれてしまった。身体が小さいのになまじっか記録を作ったために人生を狂わされてしまったと打ち明けるのだ。女性たちには「そういえば」と成宮の顔を見て彼の有名だった頃を思い出す。そして不意に、成宮の話を中断するかのように買ってきたばかりの花火に点火して楽しむ。
  この場面に私ははっとした。そしてここだけが私にとってはこの映画を見た「収穫」であった。成宮は挫折感を引きずっている。そしてようやく話すことができ始めた、いうなれば自分の人生に向き合うことができはじめた瞬間ではなかったか。一方、そういう成宮の話を中断するかのようになぜ女性たちは花火を始めたのか。挫折感に籠ることの鬱陶しさをきらったのか、それともせっかく萌しはじめた連帯意識を成宮に確認させたかったのか。成宮はそんな女性たちの花火をどう受け取ったのか。話の腰を折られたと思ったのか、花火はさして美しいとも思わなかったのか、それとも孤独に籠ることの自分勝手さに気づかされ、連帯意識に沿うことの大事さを指摘され自己反省に向かい始めたのか。この場面は花火で終わってしまい、成宮寛貴がどう受け止めたのかは明らかではないが、後の展開をみると、成宮はどうやら連帯意識のほうへ舵を切ったようだ。またこの花火の場面は映像でもって語りかけるいかにも映画らしい場面である。
  さて私は成宮と同じような過去があるとして、同じく成宮のように二十代前半の年齢として花火に対してどういう反応を見せたか、私自身をふりかえさせられた。たぶん私は花火が邪魔だと思ったにちがいないのだ。私は自身の挫折を自身の言葉で明らかにしたいが的確な言葉がなかなかみつからない。そういうなかでは生きた実感が湧かない、宙ぶらりんの状態をいつまでも強いられるかのようだ。だが生活は否が応でも押し寄せてくる。人々と同じ職場で共同作業をしなければならない場面も当然にある。自分は人の役に立たなければならないし、人もまた自分の想定どおりに動いてもらわなければならない。そうして所定の作業を終えたときにはたしかに達成感がある。そこでは各々の過去の「挫折」は侵入しようがなく消失してしまう。だが私はそういう消失が嫌だ。また連帯感とはたんに共同作業から自然に形成されるものではなくて、それ以上の感慨が込められる。人は孤独を好みもしようが純粋に孤独ではけっして生きられないから、人とつながりを持たなければならない。人とつながることは生きることと同義であり、これを歓びとすること、歓びを共有し共有を確認しあうこと、これが連帯感だといえようが、「挫折」とどう回路をつけるのかがなかなか見つけられないのだ。また「挫折」を明瞭化する作業は連帯感とは一見別々にあるようにみえる。連帯意識を共有することこそが「成熟」に近づく一歩ではあるが、それを無理なく抱くことができれば生きることが楽にもなるのだが。
  まだまだこの問題意識は尾を引きそうだが、二十歳代の私はたいへんに愚かで未成熟であった、その反面なつかしくもある。この映画を見てあらためてそれに向き合わされたということを記してこの文を終えよう。
       ★★★
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