大洋ボート

トウキョウソナタ(2008/日本)

トウキョウソナタ [DVD]トウキョウソナタ [DVD]
(2009/04/24)
香川照之、小泉今日子 他

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  香川照之が会社を突然リストラされる。だが妻の小泉今日子には何も言わず毎日出社するふりをして外出をつづける。ハローワークなのか、職業紹介の窓口に行ったり、炊き出しにありついたりする。どちらも長い行列のなかに身をおかなければならない。寒々した光景だが、長引く不況下にあっては、多くのサラリーマンにとって人ごとではすまされない気がするのではないか。私はサラリーマンではないが、不況の影響は、私もまた日々痛感せざるをえないものがある。
  失職を言い出せない香川だが、やがて小泉今日子にばれてしまう。毎日一緒に暮らしていると勘がはたらくのだ。どこかよそよそしさが、芝居めいたところが微細にあってそれが日々重なると、おかしいと思わざるをえない。映画がはじめてそれを指摘するのではなく、私たちの生活の経験が納得させるのだ。また彼らには二人の子供がいるが、二人とも自分の未来についてや好きなことに固執し、没入しようとして忙しい。親の現在がどんなものか考えようともしないどころか、自分たちの固有の未来絵図を親の目から隠そうとする。長男はアメリカ軍に入隊しようとするし、次男は授業料をピアノのレッスン代に流用する。
  子供は家庭から出て行こうとする遠心力がはたらく。それは自然なことで親もそれを承知だが、親はともすれば自分の好みの進路に導こうとする。冒険は避けさせて安全を選ばせようとする。子供の遠心力にたいして親なりの求心力をはたらかせようとする存在だ。やがて二人の子供のめざすところが父の香川に知れると香川は激怒して長男をたたく。「世界平和」への貢献を口にする長男にたいして、世界なんてどうだっていい、自分(長男)が大切なんだと切り返す。香川と同じ言い方はしないのかもしれないが、私は香川の気持ちはわかるつもりだ。長い人生を生き抜くためには土台が必要だ。土台とはいろんな要素が詰まっているが、エゴイズムはとりわけ重要だ。人を裏切ることを奨励するのではなく、競争に勝たないまでもその渦中で耐え抜くことができなければ生きていけないからだ。余計な感傷に流されてしまってはならない。このとき香川は失職を子供に知られていないが、自分の嘘を隠して立派にふるまおうとするたぐいの欺瞞意識はまったくない。どうしても言わざるをえない、ほとばしるものがあるのだろう。とはいうものの青年(長男)の冒険心、かっこよさを求める姿勢も私はわからないのでもない。「男は生意気くらいがちょうどいい」という歌詞の歌もあった。ただこの家族においては対話がもとめられない。対話による相互理解をめざすよりも対立が先鋭化することを怖れて、母・妻の小泉今日子が割ってはいる。ここでも、こういう家庭のほうが多いのだろうという感想をえた。
  同じ家に住む。そして同じ食卓に着きそろって食事をする。会話は少ない。食べ終えると子供はさっさと自分の部屋に戻る。少しの不満は解消されないが、それ以上にばらばらになることは避けたい。だれしもがそう願うのではないか。また一つの希望がみいだされたとき(この場合は次男の音楽専門中学の受験)家族はその希望に向かって一体になれるのではないかという指摘もある。
  カメラアングルはオーソドックスで静謐。黒澤清監督は香川照之と小泉今日子のために時間を十分にさいて、まかせるように演技させている。二人も十分にそれに応えた。後半役所広司が強盗役になって出てくる個所はストーリーが飛躍しすぎる気がした。
   ★★★
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