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榊原英資『世界同時不況がすでに始まっている!』

世界同時不況がすでに始っている! (2時間で未来がわかる!)世界同時不況がすでに始っている! (2時間で未来がわかる!)
(2010/12/13)
榊原英資

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  経済のことはわからないことが多いが、題名の主張は巷間においてほぼ一致するところだろう。本書の概説においてもとくに異論をさしはさむ余地は、私にはみうけられなかった。そこで、本書ではじめて接したり印象にのこった部分を中心にとりあげたい。
  まずは現在のデフレと円高の状況について。榊原は、これは当分の間はつづくとみる。中央銀行の金利は、日本銀行をはじめとして世界中でほぼゼロ金利で、これ以上下げる余地はない。また金融緩和は十分に実行されていて、市中の通貨供給量は十分過ぎる状態だ。デフレの主たる原因は経済のグローバル化にある。つまり日本と中国ならば同じ製品の価格が同じ価格帯に収斂していく。またコンビニ店員のような同一の労働でも同じ賃金の領域に収斂していく。その結果、日本の物価や賃金は下がり、逆に中国の物価と賃金は上昇する。だから通貨供給をより増やしてデフレを脱却しようとする「インフレターゲット論」は的外れで有効ではないというのだ。現在、テレビの討論番組などをみると、よりいっそうの金融緩和を主張する識者がいるが(たとえば「政府紙幣」の発行を喧伝する高橋洋一氏)榊原はどう反論するのだろうか。過剰な通貨発行は弊害をもたらすとたぶん言いたいのだろうが、その辺を突っ込んで論じてもらいたい気がした。ただし、榊原はよりいっそうの国債増発はOKで、消費税増税も今ただちにやる必要はないと説く。
  円高ドル安については、以前のアメリカは「強いドル」を望んだが、今は逆で、投資銀行をはじめとする世界を相手にした金融による大儲けの時代は終わった。そこで金融機関の救済のためにドル(国債)の大量発行の必要がある。またそれと並行して輸出振興のためにドル安の容認でもある。アメリカのドルの大量発行は自国救済のために必然ということだろう。ヨーロッパにしてもギリシャ危機をはじめとしてユーロの信用はがた落ちしていて、円高ユーロ安となっている。この状況も当分の間は変えようがないと榊原は説く。ここでも円のよりいっそうの大量発行という処方箋があることを私は思い出すが。
  本書は2010年12月に発行された。したがって今年の「歴史的な円高」の局面以前であるが、さすがに「ミスター円」とかつて呼ばれたこともあって、今年における円の最高値突破を予言している。瞬間値として70円そこそこ、60円台という予想はさすがに外れたが。また榊原は95年4月に記録した1ドル79円75銭というかつての史上最高値のほうが、現在の円高水準よりもはるかにきびしいものであったとも記す。物価上昇などを加味した「実質実効為替レート」なるものがあって、それに基づいて換算すると95年の円高は現在値に置き換えると60円程度であった。だから現在の円高水準はそれほど危機的な水準ではないというのだ。それよりも榊原が説くのは円高メリットだ。マスコミはデメリットの側面を強調するきらいがある。円高によって原材料の輸入価格が下がって得をしている大企業もあるだろうが、それはあまりにとりあげられない。また海外の企業を安く買収できるチャンスでもある。また技術面に自信のある中小企業には海外進出のチャンスでもある。いつまでも大手企業の下請けに甘んじていれば利益が先細りするばかりである。
  マクロ経済に関する部分をとりあげすぎたが、私が一番興味を持った個所は福祉政策の部分だ。榊原はアメリカ型の小さな政府でもなく、スウェーデン型の大きな政府でもなく、フランス型の大きな政府を大いに参考にせよと説く。日本では福祉というとすぐ思い浮かべるのは高齢者であるが、ここでは若年層への子育て支援についてとりあげられている。日本でも民主党政権になってから「子供手当て」が実施されたが、フランスではもう少し規模の大きいものとして既に実施されているという。ここは噛みくだくのが煩瑣であるが、日本よりも手厚い金額であり、手当てだけではなく、子供のいる(2人以上?)家族は、子供の数が多いほど所得税が安くなる制度もある。その結果として、出生率が向上したという。(1995年 1,65 2008年 2,02)少子化対策として効果を挙げたのだ。また日本は出産、育児、教育に対する公的支援が先進国中最低レベルにあるという。消費税増税は後回しにし、国債を増発してでも、この方面での福祉政策を充実させよとの榊原の提言である。勿論、生活や文化土壌のちがいがあって、フランスと同じことをやったからといってフランスと同じ結果がもたらされるとはかぎらないことも断ったうえでの提言である。
  日本もこれから低所得の人が増えていくのだから、子供をつくることがしんどくなる。思い切った対策が必要なことは私も賛成である。そのための何年か先の増税なら仕方ないなと思う。しかしそのさいは消費税10%では足りず、20%は必要であるという。

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