大洋ボート

ブラック・スワン

  ナタリー・ポートマンはバレリーナで、所属するバレエ団の演目「白鳥の湖」の主役に抜擢される。ポートマンにとっては初めての大役で、彼女がはたして無事演じきることができるかということが物語の唯一の興味になっている。
  それとともにポートマンは繊弱な気質であり、自傷癖がある。眠っているあいだに爪で自らの肉体を傷つけるのだ。主役が決まったことからくるプレッシャーでこの傷が少しずつ拡大していく。つまり血が彼女を襲いしだいに広がっていく。またポートマンは被害妄想の持ち主でもある。ライバルのバレリーナが主役を虎視眈々と狙っていて、ポートマンにすれば、ポートマンの転落を願うようにもみえるからだ。演出家ヴァンサン・カッセルも地位を利用してポートマンの肉体を奪おうとするかに見える。個室に呼んで強引にキスを迫る場面がある。また演出家はポートマンの力量に不満で、これは彼女自身も自覚するところである。私はバレエ劇のことはなんにも知らないが、「白鳥の湖」では主役は可憐でうつくしい白鳥とともに、悪魔的で色気があって男を誘惑する「ブラック・スワン」も演じなければならない。二役ということだが、後者の役どころは彼女の繊弱さと対極的な位置にある。なんとか自分を変えようと、弱さを克服しようとするポートマンは、演出家のオナニーをしてみろという当てずっぽうみたいなアドバイスも鵜呑みにして、実践してしまう。
  ナタリー・ポートマンがどうなるか、主役を演じられるか、また被害妄想も進行することによって血が彼女の肉体をしだいにむしばんでいく過程が、サスペンスとして緻密に描かれる。逆に言うと、ポートマンの運命以外には、映画はまったく興味をふり向けないので視野の狭さも感じられるところである。ポートマンの動きにたえず寄り添うようにカメラがついて回る。
  被害妄想を克服する場面がなかなか面白い。具体的には書かないが、妄想が実際の病理としてこういう克服の仕方が当事者ポートマンにとって可能かどうか、私には知識がないが、被害妄想を加害妄想に、血への恐怖を血の海への悪魔的な嗜好に変えてしまうのだ。つまり「ブラック・スワン」の悪魔性を本番の舞台の直前にポートマンは自分に乗り移らせることに成功する。なんだか破れかぶれの心がいい結果をもたらすのだ。
  その直後だったか、足指がくっついてはなれずにポートマンがさらに困惑に落ち込む場面があった。ぎゅっと力を入れて指をはなそうとするポートマン。カメラはポートマンの顔の位置から足指をじっくりと撮る。また血が出るんじゃないかと私ははらはらした。皮膚の接着のりを強引に引き剥がすような痛さの感覚があらわになった。出血はなくほっとさせるのだが、ここが私とってはもっとも印象に残った場面である。
★★★

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