大洋ボート

我が闘争

  ナチス・ドイツの勃興から崩壊までを描いた記録映画で、一九六〇年の製作。今回はじめて見るが、部分的にはヒトラーの演説などテレビでいやというほど見せられているので、それほど新鮮味はない。もっともはじめて眼にした部分もあり、そこには印象に残るものはあった。
  作りものではない、実写ならではの迫力と凄惨さがある。ビルディングの群れが砲撃によるのか、積み木が崩れるようにたいへんあっけなくつぎつぎに倒壊する。敗色濃厚な時代のナチスがワルシャワのビル群をどんどん壊していく。まるであらたに建築物を建てるために更地にするみたいだ。住民はあらかじめ避難しているのだろうか。一方、ソ連がベルリンに進撃したときにはビル群の窓という窓からおびただしい白旗が突き出される。人間がそこしか逃げ場所がないかのように、お願いだから撃ってくれるなという悲痛な祈りが感じられる。人間の顔が見えなくても人間の感情が白い旗によって代弁される。しかし一方では、今日的視点によっては人間を代弁するはずの白い布地が、ただ単にモノとしての白い布地にしか見えない感覚も流入してくる。白旗にこめられた願いや意味に私(私たち)が、戦争の現場から遠いために鈍感になってしまっているからか。
  ワルシャワのユダヤ人は悲惨だ。収容所に送致される人をのぞいても狭いゲットーに押し込められ、栄養失調と不衛生のどん底の生活を強いられる。路上死する人もめずらしくない。三人の子供が路上で警察の取り調べを受け、ボロ服に忍ばせたにんじんやら芋やらの食料を没収される。彼等にしてみれば泣くしかないし、泣いても情けなさ、悲しさは晴れないだろう。可愛そうだ。自然にそう思えてくる。この三人の子供はなまなましい。彼等がその後どうなったか生き延びることができたか、だれにもわからないが、このフィルムのなかでは見る人の心の中で生きつづける。白旗よりも直線的に私たちに訴えてくるのではないか。また、こういう光景は昔でなくても、現在のアフリカや中南米の紛争国で起こっていそうだ。
  ヒトラーは最初は大衆の人気をおおいに集めて、第一次大戦の敗北で閉塞したドイツの気勢を盛り返した。だが彼は大衆が思う以上にやりすぎた。議会の正式な手続きにおいて、彼は大統領と首相を兼ねる総統という地位を手中にしてしまったが、それも大衆的な期待を利用してのことだ。だが期待することと独裁的権限を与えることは別でなければならなかった。後にヒトラーを引きずり下ろしたくなっても、そのときには制度的な保障(選挙)はなくなっていた。私たちが心しなければならないことだ。だがもはや先進国においては、ヒトラーのようなこわいおじさんが出現することはもはやないだろう。戦争の大規模な惨禍をを思い知ったからだし、領土拡張によるのではなく、自由貿易による経済的発展を身をもって知ったからからだ。ただ、オウムのようなカルト教団や少数のテロ集団が出現する可能性はある。
  ★★★

我が闘争 デジタル・リマスター版 [DVD]我が闘争 デジタル・リマスター版 [DVD]
(2010/12/24)
ドキュメンタリー映画

商品詳細を見る
関連記事
スポンサーサイト
    07:01 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://oceanic.blog70.fc2.com/tb.php/410-d759dd96
プロフィール

seha

Author:seha
FC2ブログへようこそ!

カレンダー(月別)
09 ≪│2017/10│≫ 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
全ての記事を表示する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
リンク