大洋ボート

ビッグ・ウェンズデイ(1978/アメリカ)

ビッグ・ウェンズデー [DVD]ビッグ・ウェンズデー [DVD]
(2002/08/09)
ジャン=マイケル・ヴィンセントウィリアム・カット

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  サーフィンの場面がふんだんに出てくるから、残暑厳しい今の季節に見るにはぴったりの映画。のみならず、青春というものをこれだけ鮮やかに切りとって見せてくれる映画はそうざらにはない。傑作だ。青春は後の人生にたいして人それぞれに正と負の遺産を付与するが、この作品では正の部分が大部分で、輝いている。人は誰でも年を取って若い時代から否が応にもとおざかってしまうが、とおざかるにつれて若い時代が逆に輝いて見える。その時代に面白く生きたという実感をもつことができて、とおざかっても財産として残る。人生に豊かさをもたらす。だが、そんな青春のまっただ中においても暗さや迷いもあり、その部分もまたきっちり拾われており、立体感がある。
  時代は1960年代の前半から70年代前半の約10年間で、カリフォルニア海岸でサーフィンに興じる若者三人組が主役だ。二十歳前後だろうか。また彼等は何をやって生計を立てているのか、学生なのか無職なのかわからない。だがそんな細部はどうでもいいとばかりに大胆に省略されていて、これが効果的で、ただサーフィンを思いっきり楽しむ夏の日々が描かれる。サーフィンの一番の名手のマットは、ともすれば酒に溺れるが、理由はわからない。事故への恐怖心なのか、このままサーフィンをつづけることへの懐疑なのか、そんなところだろうか。だがその理由が確定できなくても、私たちが若い時代をふりかえると何かしら覚えのある風景として納得できてしまう。ああ、あんなものだったなあ、という風に。この省略もまた成功している。
  サーフィンをするために全米から若者たちがやってくるなかで、彼等三人組はその名手として有名らしく、若い女性との大胆な交流もある。女性をめぐっての敵対するグループとの派手な喧嘩は映画らしくコミカルに描かれる。サーフィンのボートを製作する中年の男や若者で賑わうレストランなども登場し、サーフィンがあくまで中心に据えられている。その時代に流行ったオールウェイズの音楽もふんだんに取り入れられて心憎い。
  そんな彼等三人組を中心としたグループの最後の輝きを見せるのが、ベトナム戦争下の徴兵忌避運動だ。一人はその運動には参加しないが、あとの二人は精神錯乱のふりをしたり故意に怪我をしたりで見事に成功する。ここも喧嘩の場面と同じくコミカルな描き方で、徴兵検査の会場はまるでパーティみたいだ。サーフィンの快楽と反戦の志向がぴったり結びついている。
  それ以降は冬の時代だ。一人は若くして結婚し、一人は書いたように戦場へ、もうひとりは映画のうえでは消息不明だ。さらに何年間が過ぎて一人がベトナムから帰還してくるが、彼は軍服にサングラスという格好で、子供と遊ぶ仲間の妻と再会するが、この場面も時の経過を感じさせて秀逸だ。やがて「ビッグ・ウェンズデイ」という壮大な波が訪れるという情報があって、行方知れずだったメンバーも合流して三人組は集結する。最初の場面から約10年後のことだ。
  海のそして波の撮り方がいい。大きくカールを捲く波の手前をサーファーが突っ込んでいくとさらに波はトンネルのように伸び上がってサーファーの姿を隠す。海面すれすれの位置に据えられたカメラが波をとらえることもある。「ビッグ・ウェンズデイ」はまさに垂直に盛りあがる壁そのもの。これを映画の最後に持ってくるのもセオリーだろう。映画はまた、サーフィンに適さない時化の海を撮ることも忘れない。波が海がこの映画の中心であり、三人組の青春の象徴であり、どの時代になっても絶えず彼等をそそのかし誘う。私たち見る者をも心地よくそそのかす。
   ★★★★★


  
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