大洋ボート

夜の散歩

  最近のことであるが、家族二人が旅行に出かけて四日間家を留守にした。私としては別段変わった気分にもならなかった。普段どおりに仕事をし、スーパーで弁当を買ったり自炊したりして夕食を済ませた。だがその後は退屈だ。テレビやパソコンを相手にするのも少しうんざりしてくる。その日は日曜日だったので、運動不足解消の意味も込めて近所を散歩することにした。
  幹線道路から少し奥へ入った道を歩いた。夜の八時ともなると、日曜日なので歩く人の姿はほとんどなく静かだ。あまり散策に利用したことのない道だったので物珍しさはあった。住宅がびっしり軒を連ねていて、たいていは三階建てで一階部分は車庫を兼ねた玄関、夜目にはつぶさに見えないがタイルか小石をあしらったらしい瀟洒な外装で、二階と三階にはテラスがある。今流行のスタイルのそんな住宅がほんの少しずつ大きさを変えてびっしり並んでいる。都会ならありふれた眺めだろう。そんななかにお好み焼き屋か何かの赤提灯が煌々と点るのに出会うとなんだかほっとする気分になる。別にその店に入りたくなったのではないが。同じ気分になれるのが、築年数がおそらくは三十年以上はあると思われる貧相な家が、小ぎれいな住宅の列のなかに取り残されたように姿を見せるときである。いわゆる木造モルタル塗りの二階建てで、玄関は木の引き戸で上半分はガラスがはめ込まれている。私の子供時代の定番であった住宅のスタイルである。私がほっとするというのは、都会は貧富や新旧が外観の上でも混在しているのが自然な姿だと思うからで、それを眼にしたからだ。別に大げさに感動するのではないけれど。逆に言うと、清潔感あふれる住宅ばかり並んでいると息苦しく面白くない気がするのだ。赤提灯にかぎらず、店の一軒くらいもあったほうがいい。
  暫くゆっくり歩いて幹線道路に出ると食品スーパーがあって、こちらは明かりが点って人が集まっている。店の真ん前にバス停があり、バスを利用して帰宅するつもりで乗った。バス停二つ分引き返したことになったが、急にもの足りない気分になって、バスを降りてからまた近辺をぶらぶら。もう十年以上も前に覗いたことのあるスナックビルをこわごわ訪れた。エレベーターのあるホールには各階ごとの店の名のプレートが華やかな色で貼られてある。ここでも店に入るつもりはなく、何回か上のホールに行ってみたかっただけだった。だがボタンを押していくら待ってもエレベーターは二階に止まったまま降りてこない。それならと、しつこい私は階段を利用しようとした。防災上からエレベーターの隣に階段も併設されている。だが、階段に通じるドアを開けてみたところこれが異様で、椅子やら大きな道具のようなものが乱雑に置かれて昇れなくなっている。ああそうか、二階から上はとっくに店じまいしているのだと気づかされた。一階にはたった一軒ドアの上の店の明かりが点っていた。幽霊屋敷みたいだった。私が以前行ったときには六階までだったか、すべての部屋がテナントで埋まっていたのだが。
  スナックも人口減の影響やらカラオケボックスに押されたりしてすっかり流行らなくなったようだ。私の地域では八十年代前半当たりからスナック専門のビルが何件かできたのだったが。それまでは深夜に及ぶ水商売はほんの小さな規模でしかなかったから元の状態に戻ったことになるのか。年月を実感させられた。 夜の散歩もときどきはいいものだ。
関連記事
スポンサーサイト
    01:07 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://oceanic.blog70.fc2.com/tb.php/385-2f269a34
プロフィール

seha

Author:seha
FC2ブログへようこそ!

カレンダー(月別)
07 ≪│2017/08│≫ 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
全ての記事を表示する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
リンク