大洋ボート

グリーン・ゾーン

  この映画は音楽が主役かも知れない。なぜなら私がこの映画のなかで一番楽しめたのが音楽だからだ。ヘリコプターの爆音や銃撃音もまた強烈で、シネコンのすぐれた再生装置だから結構騒々しいものの不快ではない。またそれら音響は映画にとってはなくてはならないもの、あって映画がはじめて成立するものだ。それにたいして音楽はなくてはならないものではない、騒々しさが増すだけに不快と紙一重のところにあるのだが、そこを見事にクリアして快感にまで持っていってしまうのだ。戦争だからマット・デイモンはじめ、ほとんどの人物が動く。へりが車両が動き回る。ときには爆破がある。こういう全体の動きを音楽が煽る、もっともっととせき立てるのだ。静かな対話の場面も当然あってそこでは音楽はさすがに鳴り止むが、私は早く次の場面へ行けと思ったものだ。逆に言うと、静かな場面でも私の鼓膜では音楽が、打楽器中心の単調なリズムを勢いよく刻み込む音楽が心地よく鳴り響いていたのだ。
  イラク戦争終結後のバグダッドを中心とした同国が舞台で、マット・デイモン率いる部隊は大量破壊兵器を発見する任務を命じられている。だが国防総省の情報に基づいてそれらしい施設を奇襲しても何も出てこない。やがてマット・デイモンは情報そのものに疑念を抱く。在イラクのCIAの知人も同じ思いを共有する。そこで彼は情報源の人物であるコード名「マゼラン」の探索をさらに少人数となった部隊(有力な部下が反対したから)とともに敢行する。逆にこの動きを阻止しようとするのが某政府高官で、場合によっては「マゼラン」を消すことも辞さない腹づもりだ。
  話には何一つ新味はない。「大量破壊兵器」うんぬんの情報が捏造であったことは知れ渡っているし、映画ヒーローがアメリカ国家のある部分を敵に回して暴れ回るという構図も使い古されている。だがそれにもかかわらず面白いのだ。マット・デイモンが動き回る。(パソコンのニュース記事に当たっているときでさえ「動く」印象がある)クライマックスでの逃げ回る「マゼラン」と追うマット・デイモン、さらに両者を上空から追跡するヘリ部隊という二重の追跡=逃亡劇。それぞれの対象をカメラが交互に、的確かつスピーディーに映し出す。さらにその「的確」さに反するような手持ちカメラのぶれや、大部分が暗闇に溶け込みかねない人物像(赤外線カメラも用いられる)の動き、この映像処理が臨場感を高めてくれる。人間が動くときには周りの映像もぐらぐら動く、動かないのは観念のなかにある目的だけだ。こういうことに気づかされることが心地よい、そしてまた対象の人物がぐらぐら動くからこそ逆に何一つ見逃さずに見抜いてやろうという肩入れの気持ちが、視聴者に湧いてくる。ぞくぞくさせられるのだ。
  それらマット・デイモンを中心にした人の動きを応援し、煽るのが音楽というわけだが、ときには音響の世界に席をゆずったり、協奏したり控えめだったりとハマリ方が見事なので、音楽が映画全体の司令塔のようにも感じられるのだ。お話的には何も収穫を得られないのは確かだが、娯楽=消費としての映画の面白さを満喫できる。
  ★★★★
関連記事
スポンサーサイト
    01:43 | Trackback : 1 | Comment : 0 | Top
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://oceanic.blog70.fc2.com/tb.php/384-9ab8d7af
周知の事実でも描き方次第。情報が錯綜するサスペンス的要素と、終盤のアクションに緊迫感、臨場感があり、なかなか見応えのある作品であった。主人公と同じ目線で真実に近づいていく気分が味わえる。 2010.06.16 00:22
プロフィール

seha

Author:seha
FC2ブログへようこそ!

カレンダー(月別)
06 ≪│2017/07│≫ 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
全ての記事を表示する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
リンク