大洋ボート

フローズン・リバー

  女性二人がカナダからアメリカへの密入国の手助けをするという話。メリッサ・レオは夫に失踪されて住宅ローンの支払いに窮する。家には育ち盛りの子供が二人。たまらなくなって、夫の立ち寄りそうなところを訪ねると、夫は見つからなかったが彼の車が駐車場にある。そこはカナダ原住民保護区内のビンゴゲームの会場で、夫の車に乗る女が目に入った。原住民の女である。メリッサ・レオは当然車を取り返そうとするが、女に冒頭に記した仕事をもちかけられて、金が必要なメリッサは背に腹は代えられず乗ることになる。報酬は1200ドルで二人で山分け。  
  メリッサ・レオという女優の情けないやら悔しいやらの表情が真に迫って、いい。同情を誘う。それとは対照的な原住民の女のふてぶてしい態度。特異な事情がなければ、結びつきそうにない二人である。主婦メリッサは普通なら犯罪に手を出しそうもない。それがやがて二人は硬い友情で結ばれることになるのだから、人生どう展開するかわからない。奇縁である。
  カナダからアメリカへの国境越えは凍った河を利用する。警備がととのった橋ではまずい。ライトに照らされた凍河があらあらしくて無気味だ。雪原と氷の無秩序。だが原住民の女はルートを知り尽くしていて、二人はつぎつぎと密入国者を後部トランクに押し込んで越境を繰りかえしては、ブローカーに引き渡す。カナダ人は勿論、世界中から密入国者がやってくる。そしてパキスタン人の女性を乗せたときだ。彼女は大きなバッグを持ち込もうとした。これをメリッサ・レオはテロリストの武器と勘違いして女に内緒で途中で捨ててしまう。だがその中身は女の乳児だった。女を下ろしてそれを知った二人はあわてて凍河にもどるのだが、このあたりが本作の白眉だ。
  女二人は血の通った人間を運んでいたことに初めてのように気づかされるのだ。それまでは「モノ」を運んでいたかのように。メリッサ・レオの犯罪動機はローン返済の金欲しさだが、それも子供のためだ。家という子供の環境を維持するためだ。原住民の女にも義母になかば強奪された乳児がいる。自分たちに照らし合わせてパキスタン人の女が泣き叫ぶ気持ちは痛いほどわかる。ああ、なんてことをしたんだろうと。女二人は犯罪に関わるのは一時的だと自分に言い聞かせている。子供を護るという自分にとっては崇高な目的に席をゆずって自分を貶める。犯罪行為の最中は本来の「自分ではない自分」だ。目をつむっている。それが乳児の存在を告げられたことによって、束の間忘れていた本来の自分に劇的に戻る。私も見ていて虚をつかれた。しかも心を洗われた気にもなった。快感でさえある。また、このことがあって二人の女の間には、一時的な仕事仲間という以上の相互理解と友情が生まれる。
  このあとは警察の捜査がメリッサ・レオと女に迫ってきて、サスペンスは緩みなくつづく。物語の詳細は省くが、二人の女性の友情がたいへんあたたかい。家族という枠のなかにあるあたたかさが、さらに外の世界に広がって大きく形成されたような幸福感を、視聴者は体感することができる。
 ★★★★

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