大洋ボート

社長洋行記(1962/日本)

社長洋行記 正・続篇 社長洋行記 正・続篇
森繁久弥 (2005/02/25)
東宝

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 貼り薬の会社がアジアに販路をひろげるため、社長以下数人が香港に出張するまでの話。社長に森繁久弥、部下に加東大介、小林桂樹、三木のり平ら。東京と香港の両方にレストランを持つ女性が新珠三千代 。1960年代に堅実な人気を誇ったシリーズの初期の一本。

 このシリーズは子供の頃、何本かは劇場で見た。当時の印象としては、宴会が好きでよくドジを踏む三木のり平がたまらなく面白かった。今見てもさすがに面白いが、そちらよりも森繁と小林のやりとりが、何とも言えないおかしさがあった。娘さんに「できちゃった婚」(相手の青年は売れない芸術家!)をされて愚痴ることしきりの森繁が、小林を誘ってはしご酒。身体や頭を触られ、からまれて困惑する小林だが、いきなり「社長、ぼくは、ほんとはお嬢さんが好きだったんですよ。」とやってしまう。小林と娘のやりとりの場面は、映画にはまったくないので、鑑賞者にとっても大変唐突である。はたして真情の吐露なのか、いや、万が一そういう気持ちが小林にあったとしても、ここでそれを告白すること自体、やはり異様ではないか。だが森繁の反応を見て鑑賞者は納得する。「何故、それをもっとはやく言ってくれなかったんだ、きみの方がよっぽどふさわしいじゃないか。残念なことをしたなあ。」と大感激してしまうのだ。ここまで書くとわかるだろう。真実か嘘かは不明だが、小林がそれをいったことで二人の人間関係は一気に濃密になってしまうのだ。小林の社長への同情が森繁の胸を打ったのだ。前にもましてじゃれ合うように身体をさわり合う二人。まるで落語の世界。

 これはサラリーマンの世渡りに必要欠くべからざる人情の表現なのだろう。仕事はできないよりもできた方がいいが、それだけでも居心地がどことなく悪い。そこで身体をすり寄せ合うような一体感と相互の同情が、サラリーマンの集団のもうひとつの支えになりうる、ということだろう。こういうことはさすがに子供の目にはわからない。まあ、終身雇用が常態だったころの古さが染みこんでいるのかもしれないが。それと娘の「できちゃった婚」に泣く父親という設定も、当時の映画としては新しいのではないか。娘さんの縁談に気をもむ一連の小津安二郎監督作品の父親像に対するパロディにもなっている気がする。

 もう一つ気づいたことは森繁の眼鏡。アクションスターのサングラスでもなく、喜劇役者のまんまる眼鏡でもない、ごく普通の眼鏡だが、主役の人がこれを使用することによって森繁ばかりではなく、映画全体までも雰囲気が変化したように思う。ちょっとおおげさだが。森繁もそのほかの日本の主役俳優も、やたら眉間の皺が目立つ。これを隠して明るさをもたらしたように思う。

 なお、本作には続編があり、話がつながっているそうだが、私は見ていません。
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