大洋ボート

万城目学『鴨川ホルモー』

鴨川ホルモー鴨川ホルモー
(2006/04)
万城目 学

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  読むべき人が読めばおもしろいのかもしれないが、私には合わなかった。学園青春ものというジャンルに括れそうだが、そこにSF的、落語的要素が多く加味されている。恋愛や友情、団結を描いた部分はテレビドラマなどで昔何回も見せられたようで、格別の変化はないが、受け入れやすかった。つまりこの部分はオーソドックスで好感がもてたのだが、サークル活動の部分が私が古い人間からなのか、どうもついていけない。ここだけがSF的・・・な作りになっている。一般の人には影姿がまったく見えない「オニ」を大学対抗の形式で「鬼語」を発して戦わせるという話だ。自分たちにだけわかる世界、そう信じてしまえる世界というものが、学生のすべてとは言わないが学生時代にはあって、狂喜乱舞するのはわかる。それが社会的に役立つようには還元されることがなく、また勉学の向上にもつながらない。それでもそういうサークル活動が学生生活の思い出となり、精一杯活動することが個人を成長させ、未来への見えない糧となる、ということもわかるつもりだ。だがサークル活動の内容そのものが、読んでいてそれほど興味を引かれるものではなかった。

  京都大学の新入生安部は「京大青竜会」なる正体不明のサークルから勧誘を受ける。いぶかしい思いを抱きつつも入会してしまったのは、きれいな鼻をした女子学生がそこにはいっていたからだ。飲み会やドライブなどで行動をともにして、それは楽しい気分もあるが、サークルのリーダーはなかなか「青竜会」の正体を明かさない。安部は落ち着かないが、七月になってようやくその一端を知らされる。祇園祭宵山の七月十六日、四条烏丸交差点に先輩のサークルメンバーらしき京大生が十人ほど並んで入ってくる。そろいの青色の浴衣姿で。ほかにもちがう方角から白、黒、赤も浴衣を着た学生が進んできて合流する。喧嘩ではなく、そういう形式の会合だ。京大以外の大学は立命館大、京都産業大、竜谷大。やがて冬がくると「青竜会」の一回生はリーダーに引率されて吉田神社に参る。リーダーがメンバーから集めた一円玉を賽銭箱に投げ入れて、なにやら「伝統」にしたがって丁重な口上を奉げる。それからが学生らしいはちゃめちゃぶりが発揮される。六十年代の古くさいCMソングを合唱しながら裸踊りを全員が繰りひろげる。すると、身長二十センチほどの「オニ」が、彼らの前に大挙出現する。他の大学もゆかりの社寺で同じようなことをして「オニ」を呼び出す・題名の「ホルモー」とはこのオニどうしの戦いのことで「ホルモオオオォォォーッッ」と長く伸ばして大声で叫ぶのは敗北宣言に当たる。若い人が読めばくすぐられるような面白さを実感するのだろうか。

  若い人にとっては、はじめて接するものはすべて新しい。たとえ社会的に古くささが認知されたものであってもだ。恋愛もまた大学生ともなればいよいよ本格化するのだろう。我慢をかさねて思いをうち明けずにいたり、逆にすべて正直に告白してしまったりと、これもまた当人にとっては新しい。マニュアルなんてない。子供時代からそれまでに形成された「性格」そのままに通過するか、それとも殻を打ち破るか、当人が決めるしかない。あらためて思った次第だ。

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