大洋ボート

陸軍中野学校(1966/日本)

陸軍中野学校 [DVD]陸軍中野学校 [DVD]
(2007/12/21)
市川雷蔵小川真由美

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 市川雷蔵が冷酷非情のスパイを演じる。シナリオの内容からしても冷酷であり陰惨であるが、市川は視聴者にかすかだが確実な親近感を抱かせる。市川雷蔵は屈折した表現力をもった俳優だった。最終的には、市川は婚約者の小川真由美を敵のスパイとして殺す命令を受けて実行するのだが、それでも市川雷蔵のもつ表現力がはたらいて、無念さと悲哀を抑制したなかでにじませる。市川は行動的には、軍の命令にまったく反抗的ではなく従順そのもので、その意味で「優秀」で冷酷非情でけっして正義の士ではないが、なぜかそんな風に映ってしまうほどだ。出現しがたい不思議な魅力を有した俳優だったといえる。

 題名の「中野学校」は実在したスパイ機関であるらしい。その創設者の加東大介が、大学を卒業して陸軍に入隊した青年を中野学校にスカウトする。青年らは家族・友人・知人に何ひとつ告げることなく行方をくらます「不在者」の形をとる。市川もその一人だったが、どうしても納得できないのが市川の婚約者の小川真由美だった。タイピストの腕がある小川は陸軍に職をえて、市川の情報をとろうとする。だがそこは連合軍の無電文の暗号解読を使命とする部署だった。小川は以前にイギリス人の経営する会社に勤務していて、そこの社長にスパイになるようにそそのかされ、戦争に反対する気持ちもあって、従う。だから、市川ら中野学校のメンバーが苦労して、せっかくイギリス領事館から暗号のマスター・ノートを盗み出しても、小川の通報でたちまちにして暗号を変更されてしまう。

 中野学校の訓練の過程も描かれる。訓練の内容はやや貧弱にしか描かれないが、二人の自殺者が出ることが痛ましい。寂しさに耐えられなかったり、不祥事を起こしたりで、後者の場合は「自殺」ではなく、機密保持と学校の「見栄」のための極刑であり「自殺」の形をとらされたに等しい。同僚が剣を突きだしたところへ突進させられるという残酷さで、市川雷蔵は制止することなく黙って見守るのみだ。

 市川が小川を殺すのは、加東大介の「温情」の命令による。スパイの汚名を着せられて(名前を公表されて?)官憲によって処刑されるよりも密かに葬るのが、小川にとってせめてもの名誉だからと言う。二人しての逃亡もありうるところだが、この映画ではそうはならない。また、東宝の社長シリーズではさっぱりおもしろくない加東大介が、この映画ではきりりとして作品を引き締める役割を果していた。
★★★

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