大洋ボート

にっぽん昆虫記(1963/日本)

NIKKATSU COLLECTION にっぽん昆虫記 [DVD]NIKKATSU COLLECTION にっぽん昆虫記 [DVD]
(2009/07/17)
左幸子岸輝子

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 DVD化にあたって、フィルムがリマスターされていないせいか、暗い部分がべっとりした暗さで支配されて見づらい。また録音状態も悪く、この二つの欠点があわさって主人公・左幸子の生地の東北の貧しい農村の場面が理解しにくいものになっている。好色な人が多く、左も若いときから身持ちが悪く、子供に「鬼」と呼ばれる。左の父(そうではないかもしれない)の北村和夫も好色で、左とは近親姦とまではいかないにしてもそれに近い関係である。また北村は知恵遅れにもみえる愚鈍さで、妻には暴力的だ。これくらいしか私にはわからなかった。とくに出演者の多くが口にするズーズー弁には閉口した。

 おもしろいのは、左が上京して肉体を武器にしてのしあがっていく過程だ。女工から女中へ、そして何回目かの女中勤めの先が管理売春をする北林谷栄の家で、左はここで売春を強要されていやいやながら応じるが、それを機にやがて水をえた魚のように勢いをふるっていく。中小企業の社長の河津清三郎の愛人になったり、自らも管理売春をやってみたりと「出世」する。北林谷栄の目のとどくところで、しかも北林の管理下にある女性をつかってのそれは重大な裏切り行為そのもので、当然北林にはげしく非難されるが、左は眼中にない。(暴力組織が噛んでいれば、ただではすまないところだろう)そしてまた左も「配下」の女性たちに裏切られることになる。管理を逃れて、ひとりで「商売」をする女性がでてきたり、時代が経過すると、実の娘の吉村実子もまた一時的ではあるが肉体を売ることをする。母という立場は不思議なもので、自分がふしだらでも娘が同質の人間になることにはものすごい嫌悪を向けるのだ。このあたりの左をはじめとする売春業に身を染める女性たちの、しっちゃかめっちゃかな様子が、たいへん生き生きと描かれていて、この映画の長所になっている。

 映像的な特徴としては、新興宗教の集会やら、基地や安保にからむ政治闘争の様子、つまり人が大勢あつまる様子が左幸子の行動にからめて描かれることだ。左が乗ったタクシーがデモ隊にはばまれて進めず、左が苛立つ様子がたいへんおもしろい。つまり人がおおぜい集まって気勢を発しようとも、左はなんの影響も受けない。自分の商売という自己利益の追求にしゃにむになっているからで、政治闘争の熱気など、まるで無関係なのだ。左翼の勢いが盛んだった時代で、今と比較するとなつかしさ、古さを覚えるところだが。

 今村昌平監督が描きたかったのは、つつましさや倫理とはまったく無縁に、ときには八方破れになって力強く生きぬく女性の姿だ。左幸子は期待にこたえる熱演。
★★★

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