大洋ボート

北辰斜にさすところ(2007/日本)

北辰斜にさすところ [DVD]北辰斜にさすところ [DVD]
(2008/09/05)
三國連太郎;緒形直人;林隆三;永島敏行;坂上二郎;佐々木愛

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 旧制第五高校と第七高校の野球の対抗戦が、それぞれのOBの尽力によって復活されることになった。すなわち現在の熊本大学と鹿児島大学の現役の野球部が試合をして、そこにOBが同窓会をかねて集結し、観戦するという催しだ。七校OBの三國連太郎にも誘いが来るが、彼はいったんは断る。戦場において、高校の先輩で何かと世話になった緒方直人を見捨てたという苦い体験があったからだ。三國はそのときは軍医で、負傷して動けなくなった緒方が担ぎこまれてきたが、転進命令によって置き去りにせざるをえなかった。この記憶が,はなやかでかつ陽気に盛り上がるであろう「復活戦」への参加をためらわせたのだ。

 旧制高校のとくに寮生活を中心とする青春の時期は、私はよく知らないが、独特のものがあるようだ。この映画でも「馬鹿の天才になれ」などと奨励される。バンカラ気質で、よく遊びよく学べ、というところだろうか。飲酒や、校歌をうたいながら踊ったり、じゃれあい半分の取っ組み合いがあったりする。同性愛の匂いもかすかにする。青春の普遍性を受けとれるが、今の時代以上に治外法権的な自治と自由があったということか。

 現役の選手たちは、当時のユニホームを着て試合する。三國の孫もピッチャーとして七校のマウンドを守る。三國自身も七校のピッチャーだった。そこで決して大げさではなく、予期せぬことが起きる。OBたちが口々に孫の選手の投球ホームが当時の三國とそっくりだと言い出すのだ。ここは私も心を動かされた。奥底の記憶がよみがえった、というよりも記憶が動き出したのだ。こういうことはたしかに生起しうるだろう。そしてそれをジャンプ台のようにして、それぞれの守備位置につく選手を「あれは誰それだ!」とつぎつぎになぞらえていく。なぞらえられた選手は全員が戦死者だ。ああ。これは幸運な再会だなあ、ほんとうの供養だなあと、私はOBの感動が伝播してくる気にさせられた。ここがそれこそ、この映画のいちばんの「盛りあがり」の場面だ。

 忘れてはならないのは緒方直人。試合がはねたあと、球場の目立たない場所で三國に向かってにこやかに笑いかけている。軍服ではなく高校時代の制服の姿で。緒方の姿は三國にしか見えないのだ。ここはつけたしではなく、制作者が最後の仕上げとして強調したかった場面だろう。
★★★

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