大洋ボート

パリの灯は遠く(1976/フランス)

パリの灯は遠く [DVD]パリの灯は遠く [DVD]
(2009/12/02)
アラン・ドロン/ジャンヌ・モロー/シュザンヌ・フロン

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 見た直後は凡作ではないかという印象だった。とくにラストでアラン・ドロンのとった行動は、唐突過ぎてありえないのではないかと思わざるをえなかった。ところがそうでもない、これがボデイ・ブローのようにあとから効いてくる。その行動は非現実的ではあるが、映画のなかでは流れに沿っている。つまり、映画として説得力をもっているということだ。それが芯として残って、さらに現実のなかに逆流してくる。そういうある種、鮮やかさの獲得に成功した作品ではないだろうか。

 ナチ占領下のフランスで、アラン・ドロンは美術商をしている。愛人をベッドにはべらせているところへ、切羽詰った表情をした男が絵を売りにくる。ドロンは室内用のガウンを着たまま応対して、安値で買い叩く。優雅なものだ。ところがそこへ、ユダヤ人の互助団体から手紙が送られてくる。宛名はロベール・クラインで、同姓同名だが彼はユダヤ人ではない。ユダヤ人狩りが激しさをますなかで、迷惑どころか危険でもある。ここからドロンの同姓同名のユダヤ人にたいする探索行がはじまる。同じ時期に、警察がドロンにたいして疑惑の目を向けはじめる。

 昔の作品だからテンポがのろく、退屈さは否定できないが、よく言えば、映画の時間の中にじっくりひたることができる。また、アラン・ドロンは動き回るが、あくせくするなかで、まだ見ぬ人物ロベール・クラインを凝視する表情を一定に保持したままで、視聴者はそれに引っぱられる。そこが映画の芯になっている。また周辺の人物も、腫れ物にさわるといえばオーバーになるが、誰もが彼に注視の視線を注ぐ。ユダヤ人のアパートを見つけたが、そこは既に引きはらったあと。故意か偶然か、ユダヤ人のクライン宛の手紙がドロンに届き,その指示にのって彼は動くと、ユダヤ人ブルジョアの広大な屋敷に着く。十人ほどの人がいて、小楽団の演奏の元、食事の最中で、主だった人は彼を歓待してくれる。ユダヤ人クラインの愛人らしいジャンヌ・モローもいる。

 ユダヤ人クラインに何回もたどり着きそうになりながらも果せず、ついにドロンはドイツに移送されるユダヤ人の群れの中に連れて行かれるが、ユダヤ人クラインもまた同じ群れのなかにいる。非ユダヤ人であることの証明書が友人によって届けられ呼びかけられるが、まったく耳に入らないドロン。ドロンは、そのときまさにクラインを発見したのだ。ここではじめて視聴者は、ドロンが同姓同名のユダヤ人にたいして大きい同情を、また愛情を、いいようのない思いを向けていたことがわかる。一連の行動のなかで、それは形成されていたのだ。

 眠気をさます場面があった。警察によってドロンの美術品は没収されるのだが、その現場に立ち会ったとき、古い楽譜がでてくる。確かめるために知り合いの女性にピアノで弾いてもらうと「インターナショナル」のメロディで、男の友人があわてて制止する。左翼の歌もまた、この時代は御法度だったのだろう。★★★

 (今回から、映画にかぎって採点簿をつけます。5点満点で★ひとつが1点。皆さんと同じ方式です)
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