大洋ボート

96時間

 格闘、銃撃、カーチェイスなどにおける編集技術が非常に巧みだ。前後の経過が、またその間のリーアム・ニーソンをはじめとする登場人物の肉体の動きがわかりやすく把握できるのではない。劇的な瞬間だけをとりあげてつないでいくという方法だが、これがかえってスピード感をもたらしてくれる。中年のリーアム・ニーソンにそれほどの身体能力があるとも思えないが、この編集の効果で、とてつもない肉体ではないかと錯覚させてしまう。ただ、この部分は見ごたえがあっても、それ以上のものがこの映画にあるかといえば、ない。つまり、父の娘に対する並外れた愛情と執着が主題なのだが、それを解決するのは大部分が腕力、それもたったひとりで犯罪組織の連中をつぎつぎになぎ倒していくという途方もない腕力であり、あまりにも非現実的なのだ。もっとも、そういうしかつめらしさを捨てて、大活躍する中年の星、リーアム・ニーソンに肩入れすることは十分可能だ。

 はじめから4分の1くらいは人物関係の説明にあてられるが、この部分は比較的ゆったりとしている。ニーソンは退職したCIA職員で離婚歴があり、一人暮らし。愛娘は前妻とともに継父のもとにいる。だがニーソンは娘のことをいつも気にかけている。誕生日プレゼントにカラオケの機器を買って、わざわざ学校のパーティに持参するという入れ込みようだ。このあたりは暖かい。だが、娘が旅先のパリで人身売買組織に誘拐されるところから映画の趣はガラッと変わる。リーアム・ニーソンは娘を取り戻すべく、まるで鬼に変貌する。超人的な活躍を開始するのだが、残酷でもある。「おれは特殊能力をもっている」という彼だが、口を割らせるために捕縛した男に電気ショックをかけたり、同じくパリ警察の古い知り合いの男の口を割らせるために、関係のないその妻を銃撃で負傷させたりと、ためらいがない。娘思いの一途さがニーソンをそういう動きに駆り立てると充分納得できるのだが、もうひとつは、この映画は架空の話だ、どうせ嘘ならもっとやってくれと、視聴者が知らず知らずに喝采を贈っているからでもある。

 リーアム・ニーソンは「マイケル・コリンズ」や「シンドラーのリスト」の頃に比べると、当然のことながら年をとって顔に皺が刻まれた。だが岩のようないかめしさが陰を潜め、よりすっきりしたハンサム顔になった。

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