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水野和夫『金融大崩壊』・堀紘一『世界連鎖恐慌の犯人』

金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)
(2008/12)
水野 和夫

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世界連鎖恐慌の犯人 (Voice select)世界連鎖恐慌の犯人 (Voice select)
(2008/12/18)
堀 紘一

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 私は金属加工関係の自営業をいとなんでいるが、世界同時不況の嵐がようやく私のところにも直撃してきて随分と仕事量が減った。暇である。それに今回の不況は今までにも増して規模の大きいものに、そして長期にわたるものになるのかもしれない。だがこういうときは焦ってもどうしようもない。動き回ることは必要だが、それで打開できなければ、忙しくなるまでのんびりとかまえて待つしかない。覚悟を決めておいたほうがいい。

 私は経済と金融に関してはまったくの素人だが、やはり今回の大規模不況には少しばかりは関心を持たざるをえない。そこで何冊かの解説書を読んで探ってみた。いまだにちんぷんかんぷんの部分もあるが、大づかみして言えば、アメリカの金融資本が「金転がし」に失敗した。しかも世界全体の金融資本や投資家を巻き込んでの大失敗をやらかしたということだろう。

 サブプライム・ローンの焦げ付きが事の発端であることはすでに知られているが、そういうローンをつくっていわゆるサブプライム層に貸し付けたこと自体を堀紘一ははげしく非難している。年収何億も稼ぐという投資銀行の幹部がサラ金のようなことをやった。しかも、日本のサラ金のほうが金額が少ないだけ良心的だという。サブプライム層とは貧困層はもとより過去の返済履歴に傷のある人や定職をもたない人たちのことだそうである。貸付の当事者は当然高リスクを勘定にいれるから貸付利子は高くなる。利子の低い順から並べるとプライム、オルトA,サブプライムとなる。その利子の高さからサブプライムローンは、住宅価格が年々上昇していってその担保価値が増えることによって新たな借り入れ枠がつくられなければとても返済不可能なしろものだった。だが住宅の価格が長期にわたって毎年上がりつづけるなんてことはありえない、いつかは下落する。事実2006年後半が住宅価格の頂点で、それ以後は急落に転じている。またそれ以後にサブプライムローンの焦げ付きも目立つようになる。ローンが滞れば担保として住宅は没収される。アメリカ金融資本はサブプライム層といわれる人々に対して中産階級になる夢を束の間あたえたあとで奪い去ったことになる。水野和夫は資本みずからが資本―国家―国民の三位一体構造(三者の良好な関係)に亀裂を入れたという言い方をする。

 さらにCDO(コラテライズド・デット・オブリゲーション=債務担保証券)なるものが世界中に販売された。これはサブプライムローン債権が買い取られ途中で証券化されたものをこまかく分割してほかの債権、証券類といっしょにされてひとまとめにした証券商品である。金融工学なるものを駆使してそういう複合証券ができあがったという。だがそこにサブプライムローン債権がふくまれている(ほかにもジャンク債なるものもふくまれている場合がある)ことを見抜くには、特に日本人の場合は金融工学(私はわからない)と英語の知識がなければできなかった。堀は言う。日本の地方銀行がかなりこれを買ったが、中身をよく理解した人はきわめてすくなかった。格付け会社が最上級の格付けをしている、同業他社も購入している、ここは買っておこうという程度のノリだったと。さらにもうひとつの重要なCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という保険商品も書いておかなければならない。これはCDOなどの債権類を保障する保険で、CDOの予想受け取り利子よりも安い金額で購入できるが、仮にCDOがゼロ価値になった場合はその全額を購入者に支払わなければならないという契約になっている。CDSはA・I・G(アメリカン・インターナショナル・グループ)などの保険会社のほか投資銀行も販売、またCDOとのセット販売もされた。このCDOは販売当初は良く売れて世界中の投資家に高利回りをもたらしたという。だがCDOは世界中で暴落してしまった。投資銀行も在庫の山を抱え込んでしまい、CDSを販売した会社もCDOの損失の保障をするはめになった。あちこちで資金が急激に枯渇してしまったのだ。

 ながながと書いてしまったが、ほとんどが受け売りにすぎない。このあともそうだろうが、アメリカ金融資本は何ゆえサブプライムローンのような危険なものに、しかも大規模に手を出してしまったのか。原点にもどってしまう問いなのだが、私には実はこれがいまだによくわからないのだ。サラ金まがいは確かだが、悪意にしては自分たちの首をも同時に絞めてしまうではないか。それとも90年代後半以降の投資銀行の繁栄に酔い痴れてしまったのか。資本主義的原理主義の正しさを信じ込んでしまったのか。

 アメリカ金融資本は日本の円をはじめ、世界中から資金をかきあつめて、その資金をアメリカ国内や世界に投資して猛スピードで資本を膨らませることに成功した。水野はこれを賞賛している。(世界主要国の金融資産は1995年から2008年にかけておよそ100兆ドル増えている。63,9兆ドル→166,8兆ドルでその大部分は欧米。世界主要国の名目GDPの伸びはその間およそ30兆円。29,5兆ドル→60,1兆ドル。この金融資産の増大はいかにも凄まじい。だからこの間に大儲けをした投資会社や個人は確実に存在する。日本は60年かかって金融資産を15兆ドル〔1ドル100円として1500兆円〕に膨らませた。水野は1995年以降日本が世界相手に欧米と同様の手法での金融資本による自己増殖〔金ころがし〕の戦略に消極的だったことを悔やむ。)堀はちがうのかもしれないが。だが彼等は最後に来て一様に躓いたのである。それもヒトラーのような独裁者によってではなく、ゴールドマンサックス、メリルリンチ、リーマンブラザースなど大手投資銀行のエリート幹部がこぞってこういうことをやらかしてしまったのだ。サブプライム層ではなくもっとほかに健全な投資先はなかったのか。バブルはいずれはじけるにせよ、膨らましすぎたのではないか。膨らませば膨らませるほど後遺症も大きい。そういう素朴な疑問はおおいに湧いてくる。水野は記している。当時のグリーンスパンFRB議長は金融資本の暴走を食い止める施策をうちだすべきではなかったかと。

 資本主義原理主義、自由放任、市場に任せることが正しい、こういう考え方がいっきょに吹きとんだ。大手投資銀行は業態を商業銀行に変えたり、破綻処理されたり救済合併されたりで、おもだったところは姿を消した。これからは公的管理の時代がしばらくつづく。不良債権処理、資本注入による銀行、保険会社、メーカーなどの国有化である。

 それにしてもあらためて納得させられるのは、金融資本が産業資本の補完物の役割を超えるほど膨張してしまったことだ。水野によれば先進国は1974年ころを頂点に、産業資本主義はそれ以上の利益をあげられなくなった。国民の中産階級化がほぼ成し遂げられたからだ。投資側からみればそれだけ魅力ある投資先が少なくなったということだろうか。そして1995年、ルービンという人が財務長官に就任して以来、アメリカは書いたように世界中から資金を集めて10年あまりの短期間のうちに金融資本を膨大なまでに膨らました。私は40年ほど変わり映えしない生活をおくっていて、それはありがたいことであるが、知らないあいだに資本主義は激変していたのだ。無知からはまったく驚異的な出来事である。

 水野によると、今後5年間はアメリカの消費者は所得の切り崩しによる借金返済に追われる。つまりあらたに借金をして消費をするという行動ができなくなる。さらに5年経っても、以前のように信用枠が消費者に提供されるかどうかはまったくわからないという。アメリカへの輸出によって好景気を持続させてきた日本にとっても。今後しばらくはその仕組みは復活しない。ならばどこに活路を見出せばよいのか。水野も堀も同意見に私には読めたが、BRICsやアジア諸国など新興国への投資、輸出だ。先進国10億人に対してこの地域には30億人の人々がいる。それらの人々が中産階級への階段をのぼりはじめた時、住宅、自動車、家電など莫大な需要が生れるという。

 このブログの読者に読んでもらうためというよりは、私のメモ的な文章になってしまった。失礼しました。
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