大洋ボート

ジャッカルの日(1973/アメリカ)

ジャッカルの日 [DVD]ジャッカルの日 [DVD]
(2009/03/12)
トニー・ブリトンシリル・キューザック

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 一九六〇年代初め、フランスに軍人を中心とするOASという極右の反政府組織があった。アルジェリア独立に反対し、ドゴール大統領の暗殺を何度かくわだてたが未遂に終わった。やがて彼らはジャッカルという暗号名の殺し屋にそれを依頼した……。世界的ベストセラーになったフレデリック・フォーサイスの同名小説が原作だ。当時から十年以上の時を経ての映画製作なので、なまなましさはなく娯楽作として楽しめる。

 映画はジャッカルと、正体不明の彼を追う特命刑事の捜査のつばぜり合いを描いていく。結末は最初からわかっているので(つまりは最終的には暗殺は失敗するので)それまでの過程をいかにスリリングに見せられるかがこの映画の生命だが、なかなかおもしろく、成功している。

 偽造の身分証明書やらパスポートやらの作成、松葉杖に仕込んだ組み立て式狙撃銃の製造、こういうことに関しては、ジャッカルは一流の腕を持った闇の世界の職人にコネクションを持っている。また自身の銃の腕前や変装についてもプロフェッショナルだ。ただただ彼は作成したプランどおりに動いて迷うところがない。口を割りそうな人物だったら即座に殺してしまう。そしてジャッカルを演じるエドワード・フォックスだが、一見痩せ型でニヒルに見えるが、ちょっとスポーツで汗をかこうかというくらいの明るさがにじみ出ている。十分すぎる確信犯だからで、焦燥や恐怖やじめじめしたところがまったくない。こんな人間はたぶんいないのだ。何を考えているかわからない、心理が描けていない、そういう疑問が聞こえてきそうだが、言ってみれば神秘的でさえあるそういうところがかえっておもしろいのだ。彼に思想はない。ただ暗殺に成功して大金を手に入れることだけが眼中にある。だから金さえ積んでくれればどんな依頼だって引き受ける。また、特命刑事の焦燥と執念とエネルギーが交錯する人物像との比較でも味わいある対照を見せてくれる。

 ジャッカルにミスがあったとすれば、投宿したホテルで美人を見つけてナンパすることか。そのためパリへの侵入が随分遅れてしまう結果になる。だがここで視聴者ははじめてのように彼の人間的な側面を見せられて、これもおもしろい。そういうことがあっても彼は自信満々。狭まってきた捜査網も気にすることもない。記念式典に出てきたドゴールを至近距離から見下ろせるビルの何階かの一室にたどり着き、絶好のポジションを確保する……。

 映画はセリフも大事だが、動き(行動)も大事。この映画ではセリフは動き(行動)の補助の役割を忠実に果していて、出しゃばるところがない。そして動きの描写はジャッカルと捜査陣の二つを追いながら、しだいに見事にからまってくる。捜査陣の追跡を間一髪ですりぬけるジャッカル。そこには風の通った後のような印象がある。一連の動きを追う映画は無駄がなく、淀みのない河の流れのように心地よい。
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