大洋ボート

サラエボの花(2006/ボスニア・ヘルツェゴビナ)

サラエボの花 [DVD]サラエボの花 [DVD]
(2008/06/06)
ミリャナ・カラノビッチルナ・ミヨビッチ

商品詳細を見る

 予告編ですでに明らかにされているので書いてもいいだろう。これは旧ユーゴスラビア紛争において収容所で集団レイプされた結果、妊娠し、父親不明の女の子を産んだ女性の話である。「記憶」や負傷だけにとどまるのではない、こういうことも戦火の爪あとをいつまでも生々しい状態のまま「現在」にとどめおく。

 その女性は子供を捨てることなく一人で育て上げた。子供はやがて成長して多感な時期を迎える。中学生だろうか、修学旅行の費用を工面しなければならないが、特別の資格や技能、学歴のない女性は収入が低く、こういうときには苦しい。女の子も母を不審に思うようになる。父親が戦死者や負傷者の場合は、修学旅行の費用を免除、減額されるのだが、母はその申請書を学校に出そうともしない。自分の出生の事情を執拗に知りたがる女の子に対して、母はぶちきれてしまってついにその秘密を明かす……。

 これが話の骨格で、映画作者なら、この秘密の暴露を中盤あたりに持ってきて、それ以後自分なりの構想で物語を綴っていくのが通常かともおもうのだが、この映画は骨格をそのまま投げ出している。作劇よりも「事実」の重さをより際立たせたかったのだろうか。それとも作劇することに対して自信を持てなかったのか。

 事実を知らされた女の子は、自分の出自に対してどう向き合えばよいのか、わからない。寂しさと厳しさが押し寄せてくるばかりだ。そんなとき女の子は自分の手でバリカンを使って髪を刈って、丸坊主にしてしまう。禊(みそぎ)というべきか。人間誰でも落ち込んで途方に暮れたときは、こんなことくらいしかできないのかなあ、と思った。目先を思い切って変えてみる、それで気分転換くらいにはなればいい。

 どうすればいいのか、簡単には答えは出せない。しかし生きていきながら事実に向き合うしかない。事実に負けてはならない。それが母子の共有の認識であり、そのことによっても力を合わせられるのだろう。野や山に雪の残るサラエボの冬の風景とともに、そんな張りつめたものが表現されていた

関連記事
スポンサーサイト
    23:21 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://oceanic.blog70.fc2.com/tb.php/253-75a105e3
プロフィール

seha

Author:seha
FC2ブログへようこそ!

カレンダー(月別)
06 ≪│2017/07│≫ 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
全ての記事を表示する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
リンク