大洋ボート

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

 アフガニスタンに侵入してきたソ連に反攻する地元ゲリラへのアメリカの支援の実相を描く。アメリカの国際的謀略や途上国に対する冷淡さがテーマだが、アメリカの「支援」なるもののいかがわしさは、かなりの人が直感していることなので、大きい目新しさはない気がする。今頃なんで?と言いたくなる。冷戦時の一九八〇年代初めにさかのぼる話だ。

 トム・ハンクスは題名の下院議員で、歳出小委員会に属している。「酒と女が好き」と公言してはばからない享楽的な議員生活をおくるが、支援者からアフガニスタンの惨状を聞かされる。たとえば、おもちゃと間違えてソ連が仕掛けた爆弾にちかづいて多くの子供が犠牲になっているというのだ。だがアメリカは正規軍を投入できない。冷戦時の不文律で、米ソ両国が直接ぶつかり合うことは許されないのだ。そこでトム・ハンクスの活躍が始まる。歳出小委員会で予算をつける一方で、資産家で反共主義者のジュリア・ロバーツの協力を取り付ける。さらに、CIAで冷遇されているフィリップ・シーモア・ホフマンとタッグを組んで、何とソ連製の武器をイスラエルやエジプトから供給し、パキスタンを経由してアフガンゲリラに渡す。こういう離れ業をやってのけるのだ。イスラム系国家とイスラエルは敵対関係にあるが、冷戦当時のソ連は彼らにとっては一様に敵であり、そこを巧みに衝いた作戦だった。扱いに慣れないゲリラが携帯ミサイルを発射すると、ソ連のヘリに面白いように命中して爆発し、小躍りするさまは、ちょっと愉快である。

 やがてソ連は撤退を余儀なくされる。さらにトム・ハンクスは新生アフガンに学校を建てるための援助を委員会に申請するが、委員長ににべもなく却下される。何百億ドルもの軍事援助とちがって、たった百万ドルで済むのにだ。「お前、そんなことも知らないのか」彼はそう言い放たれたような顔をする。この辺が製作者の描き出したかったカ所だと思うが、アメリカという国は所詮そんなもんなんだなあ。だから私は格別な興趣はもてなかった。アフガンへの民生支援を怠った結果、タリバンのような原始的な宗教的政権の存続を許すことになり、さらにはビン・ラディンの跳梁跋扈を許し、9,11テロを招くことにつながった。製作者はこれをいいたいのだと思うが、それならトム・ハンクスをピエロにするというよりも、わかりきった政治的メッセージになってしまう。メッセージとしても遅い。映画としてはこれではつまらない。

 ブラックユーモアというべきか。他にもっと面白い場面があった。議員会館のトムの専用室にフィリップ・シーモア・ホフマンが打ち合わせのために訪ねてくる。ちょうどそのときトムは、コカイン吸引疑惑のスキャンダルに巻き込まれようかという時で、マスコミ対応など美人秘書数人との打ち合わせに忙しい。そして両方とも密談であるために、ややこしい。一方の話を他方に聞かせたくない、また時間が切迫しているので、CIA職員を部屋に招いたり追い出したりの繰り返しになる。だが盗聴が朝飯前のCIA職員には話はすっかり筒抜けになっている。具体的には書かないが小道具のせいだ。ここでも「お前、そんなことも知らないのか」とトム・ハンクスは言われているみたいだった。学校建設の件とも相通じているのだが。

 大胆事を平静に、しかも飄々とやってのけながら最後には間が抜けているという役柄はトム・ハンクスにはうってつけかもしれない。他方、ジュリア・ロバーツは何を思って資産家の役など引き受けたのだろうか。まったく印象が薄い。

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