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丸橋賢『退化する若者たち』

退化する若者たち―歯が予言する日本人の崩壊 退化する若者たち―歯が予言する日本人の崩壊
丸橋 賢 (2006/05)
PHP研究所

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 現役の歯科院長による警世の書。若者の体力と気力の低下を丸橋は嘆く。その大きな原因の一つが歯の発育不全にあると説く。その結果、頤(おとがい)と呼ばれる下顎骨の先端部が前後左右上下の正中(まんなか)の位置からずれてしまう。同時に、正常な噛み合わせができなくなる。乱杭歯だったり、左右の臼歯が非対称で、つまりどちらかの臼歯が未発達で、咀嚼時に片側をもっぱら使うことになってしまったり、また噛み合わせの力そのものが弱かったりする。他にもあるが、歯の発育不全による頤の偏位とは、そういうような咀嚼の状態からもたらされる。

 頤の位置がずれると頭骨全体の重量バランスがくずれる。そのため立った姿勢のとき、身体の各部位がバランスを修復しようとして前後左右に傾斜する。自然の姿勢よりも力が入るのだろう。首を傾けたり、背骨が左右にS字型に彎曲したり、猫背になったり、左右どちらかの下肢と腰により重量がかかる、つまり緊張が加えられる。こういうことが恒常的になると、不快症状を引き起こす。肩こり、めまい、頭痛など、はては無気力状態になったり、神経症、精神病にいたる場合も少なくない、という。学生の場合は不登校におちいるケースも少なくない。

 それらの不快症状は、歯に原因がなくても起こりうる。だが、歯に原因の大部分か一部があることを知らない病者が多いことも事実らしい。そして、この本の何よりいいところは、治療現場からの報告の部分である。噛み合わせの修復(被せものをしたり、逆にとがった歯の先端部をけずったりする)の治療を行うと、不快症状が徐々にではあるが改善してくる。また劇的に快復した症例も紹介されていて、たのもしい。不快症状を訴えて来院する人は消極的傾向にあるから、患者も医師も根気が必要だと説くが、なるほどと思った。

 歯の弱体化は、加工食品の普及によってやわらかいものしか食べなくなったことによって顕在化した。それも戦後五〇年の短い期間に集中して起こったという。まさに現代だ。四角い顔が減って、顎のほそい高身長の若者が増えた。たいていの若者が親を見下ろすようになるまでに成長する。これだけの急激な体格変化は、世界中どこを探しても日本しか見あたらないという。だが身体の大きさに比べて、中味はどうか。現代人の食生活は、脂肪、蛋白質、カロリーの摂取に偏りすぎて、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しているという。丸橋はそこで伝統的な日本食を勧める。野菜、海草、キノコ、小魚をより多く食べなければならない、と説く。肉類は週に一,二度で十分だという。

 題名からして、若者文化論の本かなと思ったが 、当てがはずれた。しかし損はしなかった。おおざっぱながら保守主義論や天皇制論にまで筆は及んでおり、視野の広い人だと思った。また、論じられている対象は若者だけではなく、四〇代もふくまれている。
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