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『地図で読む世界情勢・第Ⅰ部』

地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなったか地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなったか
(2007/07/24)
ジャン-クリストフ ヴィクトル/ヴィルジニー レッソン/フランク テタール

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 この本を開かなくても抱くことのできる感想だが、日本ほど平和な国は地球上見渡してもわずかしか存在しないらしい。そして単一民族国家にかぎりなく近い。(外国人の定住者数は少しずつ増えていくであろうが)また宗教上の深刻な対立もない。言葉も単一で日本全国どこへ行っても通じる。これは私たちにとっては自明のことだが、こういう国は世界的規模で見るとめずらしい。ひとつの国のなかで異なる人種、民族、宗教、言語を抱えるほうが、むしろ国家の「常態」ともいえるのだ。そこに貧困が瀰漫すれば、少ない経済的利益をめぐっての内乱へとたちまち発展してしまう導火線的な素地がそこにはある。

 戦国時代など歴史上の内乱はあったが、総体的に見れば日本は比較的平和であった。上にあげた条件が自然にそういうように作用させたのではないかと思うが、もうひとつの条件として、隣の大国中国が歴史的にほとんど膨張主義的な対外運営をしなかったことがあげられるのではないか。(唯一の例外として元帝国の時代があり、日本もその時代はあやうく占領されかけた)別に中国をほめたいのではない。そういう選択をしたのは中国が宥和的だからではなく、やはり政治経済上の思惑によるのであろうから。しかしこれはちょっと不思議ではある。アレキサンダー大王やローマ帝国のような古い帝国から、歴史上の「若い帝国」であるロシア、アメリカなどの例を見ても、ほとんどの帝国は自国の領土拡張にエネルギーを精力的に注いだように見えるからだ。はやい話が、万里の長城のような大土木事業などしなくとも北方民族の侵入に悩むならば、いっそその根拠地に大軍を遠征させて占領したほうが、ずっとすっきりしたのではないか、と考えてしまうのだ。現在はチベットなど異民族を支配・属国化しているだけに。ヨーロッパ列強が全地球に進出していった十五世紀以降も中国は近くの太平洋にも進出しなかった。このことが、結果的にわが日本の平和におおきく寄与した。

 この本にはカラー刷りの地図がおおくあって便利だ。字を追いながら地図を頭に思い浮かべる手間がはぶける。無知な私が知らなかったことは数多いが、地図上の問題で興味をひかれたことをいくつかあげておこう。

1888年に引かれたガンビアの国境は、ポルトガル領からイギリス領になったガンビアと、フランス領だったセネガルの、それぞれの宗主国の思惑に応えたものだろう。


 アフリカ大陸最西端にセネガルという国がある。ダカール(パリ・ガカールラリーで有名)が首都であるが、たいへんめずらしい国境の形をしている。地図上の左に位置する大西洋に向かって口を小さくあけたような格好をしていて、その口の部分に当たるのがガンビアという小国である。(ダカールはちょうど鼻さながら突きでている)ガンビアを中心に見ても国境のかたちはめずらしい。わずかに面した海以外に国境を接するのはセネガル一国のみだからである。世界的に同じような国境線を持つ国はあるのか、思いつかない。国境の線引きの背景は引用した文に書いてある。ヨーロッパ列強の手打ちのようで、悪印象しかもてない。ガンビアの南の部分は民族、宗教が北部とは異なり、また国家首脳が北部の稲作を強引に押し付けて落花生の森を伐採したために、案の定、激しい紛争が起こったそうだ。本来なら別々の国であってしかるべきだろう。

 カリーニングラード。これは知らなかった。ポーランドとリトアニアにはさまれたロシアの飛び地だ。旧ソ連時代は軍事都市として秘密のベールにおおわれていたという。人口百万人で、うち七八%がロシア人、経済的にはリトアニア、ポーランドよりも貧しい水準だという。リトアニア、ベラルーシが独立したために飛び地になってしまった。バルト海沿岸部の豊富な石油資源、世界の埋蔵量の九十%を誇る琥珀といい、この地域の招来には明るさがある。しかしロシアが自治権の拡大に難色を示すそうだ。「国益」を手放したがらないのだろう。

 国家を持たない最大の民族が、約三千万人の人口をもつクルド人。現在は六つの国に分かれて居住しているが、この国には独立が期待された時期があった。第一次世界大戦中にトルコ人指導者クスタファ・ケマルという人が約束したそうで、いくつかの条約にも独立が明記されていた。ところがトルコがクルド人地域の北部を占有し、南部は石油資源が豊富なことから「イギリスが委任統治していたイラクに統合されてしま」った。

 国境が不確定な地域もある。国の中心から離れたところで、その地域に根付いた住民がおそらくは国境などにわずらわされずに生活していた。国家首脳もことさら国境線にはこだわらなかった。いわば国境の過疎地とでもいうのか。だが一旦国家同士の対立が抜き差しならなくなると国境線のあいまいさがさらに紛争の火種になってしまう。地域住民にとってはまったく迷惑このうえないことだ。パキスタン、インド、中国が領有権を主張するカシミール地方がその「好例」だ。

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