大洋ボート

女は二度生まれる(1961/日本)

女は二度生まれる 女は二度生まれる
若尾文子、藤巻潤 他 (2005/09/23)
角川映画

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 川島雄三という人は、水商売に生きる女性たちやそのもとに群がる男たちの生態をよく知っていたらしい。そのことが彼の作る映画によく反映されているし、また彼の映画の強みでもある。逆にいうならば水商売の世界を外側から覗き込んで同情したりさげすんだり、ということではなかった。彼女たちにとっては、たとえば売春であればそれに対する社会的批判は甘んじなければならないだろうが、それ以前に、その職場で生きることを運命づけられている。それならば多くの客を引き寄せて人気者になるに越したことはない。また人間だから、商売をはなれての恋愛感情もあるだろうし、性欲もこれまた認めざるをえない。生きることは稼ぐことであり、また、それもふくめて何が自分にとって大事なのか、それを決めて行動するのは彼女たち自身である。そういう水商売にたずさわる女性の心の変遷と揺れをたいへん鮮やかに見せてくれる映画だ。

若尾文子はいわゆるみずてん芸者。芸事はあまりうまくなく、客との交渉によって体を売ることを稼ぎの柱にしている。置屋には属しているが管理売春ではないので、客と二人でホテルや旅館へおもむくという次第。彼女は人気者で、山茶花究、山村聡、フランキー堺という面々に抱かれる。売春禁止法が施行されて取締りが厳しくなると洋風のクラブへと鞍替えする。そこで芸者時代の客と偶然再会し、口説かれてその男の愛人になる……という具合に物語は展開する。若尾文子がじつに生き生きとしている。わが世の春というとオーバーだが、少し声を上ずらせてしゃべる。また絶えず動いている。客といっしょになって布団からうつ伏せの上半身を少し出してビールを飲んだり、走行中の車のなかでは、色気のある煙草の吸い方を伝授してもらったり、ばたばたしながら軒につるした風鈴つきの花鉢に水をやったりと。見る側も自然と浮き浮きしてくる。このあたり、商売と恋愛と性欲が若尾のなかでいっしょくたになって突っ走る感がある。美形の大学生に一目惚れしたり、愛人の身になったにもかかわらず、映画館で知り合った勤労青年と関係をもってしまったりと、欲望でどんどん押していく。また逆に男の側からの情熱にも弱いところがある。

だがそんな若尾に転機がおとずれる。愛人の男に先立たれて孤独になってしまったからだ。自分の人生を見つめなおそうとしてか、子供時代(彼女は孤児である)に世話になった親戚を訪ねてみようと信州に旅行する。先に書いた勤労青年をともなって。だがもうひとつの秘かな望みが若尾にはあった。好感を持った客であった男が結婚して信州にいるという情報をえていたので、あわよくば再会したいという望みである。その男との再会は意外にはやく来る。電車内で子供をつれた男を見たからだ。眼をあわせた瞬間にお互いを知る二人。だが言葉がひとことも出ない。次の駅に着くと男は下りてしまう。たいへん鮮やかな場面だ。やがて若尾は青年をとおざけるようにして金を与えて分かれる。青年は何も知らず、出発するバスから手をふる。バスが行ってしまってもベンチに腰を下ろしたまま、考えごとに耽るような、ぼんやりするような若尾。

若尾文子はここで恋愛感情のせつなさに初めてのように気づいたのだ。欠けていたものがあるとすれば大いなる独占欲。遮二無二に相手を手に入れようとする情熱と行動だ。みずてん芸者だから結婚なんてと、無意識に一歩引いていたのかもしれない。それとも、自由奔放さを大事にしすぎたのかもしれない。寂しさといっても自分でもすぐには理解できない寂しさなのだろう。このラストは乾いている。甘ったるく同情するよりも、川島監督は若尾文子をつき放す。ベンチに腰掛ける若尾文子の遠景で映画は終わる。

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