大洋ボート

プロヴァンスの贈りもの

 題名からして、自然にめぐまれた場所で、主人公がゆったりとした気分にひたれるのかなと勝手に想像してしまったが、そういう部分がまったくないわけではないが、全体的にはせかせかした感覚に追われる。ラッセル・クロウの気持ちよさそうな表情がその忙しさを、いくぶんかはやわらげてくれるが。

 ラッセル・クロウはロンドンに住み、大手の会社に属して大勢の部下をしたがえて債権トレードを指揮する毎日。充実した日々を送っている。そんな彼のもとに南仏プロヴァンスで暮らす叔父の死亡の知らせが届いた。子供のいない叔父にとっては彼が正式の遺産相続権をもつ存在だ。だが彼は、叔父のぶどう園とワイン醸造施設を引き継ぐつもりはなく、売却する計画だった。その調査のために何回もプロヴァンスとロンドンを往復するクロウ。

 ふたつの場所は飛行機で片道一時間のへだたり。それに携帯電話でクロウは秘書の女性をとおして仕事の指示もできる。つまり特定の場所に今いるという感覚が希薄になっている。現代という時代の特徴だろう。それがさらに極端にあらわれるのが、クロウが水のない深いプールに落ちてしまう場面。飛び込み台がくさっていて折れたからだが、携帯だけがプールのふちに残った。しきりに呼び出し音が鳴るが、勿論手がとどかない。現地で知り合ったばかりの女性が発見して、水を放流してくれてクロウはだんだんと浮き上がるが、今度は携帯が水のなかに落っこちそうになる……。まさしく携帯命、という場面だ。製作者はクロウへの皮肉をこめてこの場面を撮ったのだろうか。携帯なんて捨ててしまってのんびりしろ、もっと素晴らしい生活が待っているではないか、と。だがラッセル・クロウが大真面目に携帯を守ろうとするので、そんな風には受け取れない。スーツが最初は土まみれに、次にはずぶ濡れになるが惨めさは感じられない。企業戦士としての懸命さのほうの印象が強い。おそらくは重要な資料のつまった携帯は、ぶどう園や屋敷よりもずっと大事なのだろう。

 知り合った女性とより親しくなり、叔父の娘だと自称するアメリカ人の若い女性が出現して物語は展開する。売却に反対するぶどう園の管理者も、映画の最初からいる。まずいワインしかつくれないはずのそのぶどう園がほんとうは上質のワインを秘かに醸造しつづけている、という話も出てくる。何者かの陰謀によってクロウの目から隠されていたのだ……。この話がでたとき、私は舌がちょっとワインへの郷愁にかられた。ここではじめていい映画だな、と思うことができたのだが、時すでに遅し。意外性を出すために終わり近くに持ってきたのだろうが、もっと早くこの話をだしてもらいたかった。そうすれば朽ちかかった屋敷も貧弱そうなぶどうの木ももっと素敵に見えたのに。風景のどっしりした俯瞰映像も少ない気がした。
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