大洋ボート

ユリイカ(2000/日本)

ユリイカ(EUREKA) ユリイカ(EUREKA)
役所広司、宮崎あおい 他 (2002/02/22)
メディアファクトリー

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 バスジャック事件に遭遇し、かろうじて生き残った三人の後日談。他の乗客は犯人に射殺され、犯人も刑事に射殺された。三人とは、運転手の役所広司、通学途中の中学生と小学生の兄妹の宮崎将、宮崎あおいである。いずれも深い精神的ストレスを負い、役所は運転手を辞職して家出してしまった。何年か後に家に帰ると妻はいなくなっていた。宮崎兄妹も母が家出をしたうえに父も交通事故で死んでしまった。役所は兄の営む建設会社に就職する一方で、すっかり生きる意欲をなくした宮崎兄妹の面倒をみることを決める。

 映像が特徴的だ。セピア色というのか、モノクロ写真が経年によって変色したようなすこし茶色がかったモノクロである。それとノイズが必要以上に排除されていて、無音状態を連想させる。これらは、目の前の現実の風景に馴染めない、うまくつながることができないという三人の疎外感を巧みに表象する効果をもたらしている。

 三時間をこえる上映時間だが、結論めいたものは見えてこない。説明は過剰ではなく静かだが、だらだらした感じがしないでもない。しかしこれは青山真治監督の意図するところではないか。三人にも結論は容易に見えてこない。つまるところは、視聴者に心的ストレスの概要を見てもらったうえで考えてもらおうと、委ねるのではないか。

 役所広司が夜、自分の部屋で消灯したうえで、窓の前の机の明かりを点けたり消したりする。ああ、これは希望と虚無のシーソーゲームだなあ、と私は思ってしまう。これからの人生に対してのそれである。同じ場面がもう一度ある。今度は明かりを点けたり消したりした後、窓外の狭い道を路線バスがゆっくりと通過する。例の事件のあったバスと同じ型である。私のなかでざわざわしたものが駆け上がってくる気配がある。過去の忌まわしさが亡霊のように問いかけてくる。私は役所広司を覗き込むようにして見る。だが彼の表情からは何も読み取れない、無表情そのものだ。このように視聴者たる私の問いかけが、そのまま跳ね返ってきて、私に委ねられる。

 役所は小型バスを購入して、兄妹と彼らの親戚の青年四人で旅に出る。あてがあるわけもない。とにかく変化をつけよう、新しいものと出会おう、四人一緒に生活し協力しようという意図を「形」としてまずは現実化することから始めるのだ。希望が痛めつけられた心身から湧いてこないならば、その外観だけでも先に作ってしまおうとする。役所が兄妹を引っ張りあげようとする、と言ったほうが適切か。ずっしりとくるところだ。役所としてはリーダーとして、メリハリをつけるためにもこうするしかないのだろうし、当然自分のためでもあるのだろう。

 だが兄の宮崎将のほうは、すでに別の道を突き進んでしまっていた。事件によってもたらされた負の力を押し返すために、あるいはそのストレスから逃れるための「凶暴な力」に心身をあずけてしまっていた。私には、こういうことも実践に至るかどうかは別にして、不幸な体験をしてしまった青年にとってはかなり普遍的な傾向であると思える。少なくとも空想に耽るくらいはするだろう。宮崎将とまったく同じではないが、『ディア・ハンター』のクリトファー・ウォーケンを連想させた。

 最後の、宮崎あおいが海へ入っていって兄に呼びかけるシーンも忘れられない。
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