大洋ボート

透光の樹(2004/日本)

透光の樹 透光の樹
日野皓正、秋吉久美子 他 (2005/07/22)
東宝

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 大人の「不倫」の話。小さなテレビ番組制作会社の社長である永島俊行は、二十五年ぶりに北陸のとある町を訪れる。取材で刀匠に会うためだったが、彼は寝たきりになっていて意識も朦朧状態だった。また永島に忘れがたい好感を残した娘の秋吉久美子もいて、父を看病する毎日だった。秋吉は離婚して一人娘がいる。貧乏生活だ。永島は決意して秋吉に大金を渡し、それを機に二人の肉体関係がはじまる。

 見ている最中は、恋愛の生々しさがあまりにも不足しているのではないかと苛立った。大部分は、永島が機会を作って北陸に赴くのだから、その都度つらい別れがある。走り出したタクシーを追いかける秋吉、あるいは駅での別れが耐えられなくて発車間際に電車に乗ってしまう秋吉。こういうところでは怒りの感情が爆発してもよさそうだと思ったが、秋吉はもっぱら泣いてすがるという風情だ。永島俊行も女優としての秋吉久美子に遠慮があるのではないか。むしゃぶりつく姿勢がない。

 だが見方を変えて、現実のわずらわしさや息苦しさからはなれた、かぼそい夢幻や理想の時間として「不倫」を二人がとらえ、大事にしようとするならばそれは伝わってくる。重要な舞台である杉の大木が、夢幻的な雰囲気をかもしだしてよく撮られている。町や田舎の風景が、日常の視線に沿って撮られることと好対照になっている。

 旅館で海老の刺身を食べながら、永島がそれを秋吉の肉体にたとえる言葉を吐くと「すけべ」と秋吉が言い返す。だがちっとも「すけべ」ではない。現在進行形のセックスが、まるで遠い昔のことのように懐かしがられ、大事にされる姿勢がむしろつたわってくるのだ。透明感というのか。すくなくとも壮年期の津川雅彦が同じせりふを口にすると、こういう雰囲気は出ないだろう。
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