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嵐を呼ぶ男(1957/日本)

嵐を呼ぶ男 嵐を呼ぶ男
石原裕次郎、北原三枝 他 (2002/09/27)
日活

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 石原裕次郎がドラム奏者として売り出す。その人気と挫折の話。バンドのマネージャーが北原三枝で、人気を誇っていたが、有力メンバーであるドラマーの笈田敏夫が高給で引き抜かれた。そこで、喧嘩好きでドラムの腕も荒いが将来性の見込める石原を新メンバーにする。石原の弟でクラシック作曲家の青山恭二の売り込みもあった。

 石原と笈田のドラム合戦のシーンはテレビで何回も紹介されて、有名になっている。笈田の肩を持つ暴漢に襲われて右腕を負傷した石原が、ドラムを弾けないと観念するや、マイクを片手に持って「おいらはドラマー、ヤクザなドラマー」と歌いだすのである。観衆はやんやの喝采で、今見てもジーンとくるものがある。それにうまい伏線が引かれていることに今回気づいた。冒頭近くで、平尾昌晃がバンドをしたがえてクラブで歌う箇所。平尾の歌唱力もあって、これが枕として効いている。石原が釈放された直後の留置所をはじめ、寸暇を見つけては、ところかまわずドラムの練習をやりまくるのも勿論、くだんのシーンにつながっている。それらばかりか、オープニングタイトルを最初にして、全編が歌とドラムの音で満ちていて、その中心的シーンがドラム合戦なのだ。

 母の小夜福子と石原、青山の長男、次男の関係もおもしろい。勉強ができて品行方正で母から将来を期待されているのが青山。それに比べて、石原は喧嘩ばかり繰り返す不良で、ドラムのようなえたいの知れない音楽に夢中になっていて、それにとどまらず、青山をその世界に引きずり込もうするかのように見える。銀行マンのような堅い仕事に青山をつかせようとの願いも、クラシックという分野のちがいはあれ、青山がそこに希望を見出したことで小夜をがっかりさせてしまう。それも長男の石原のせいに思えてしまう。石原は青山の進路と行動を、身を挺して守ろうとしたことは視聴者にはよくわかるし、青山の音楽志望も石原にそそのかされた結果でないこともわかる。小夜は石原と音楽全般に対する偏見と誤解を持っている。にもかかわらず井上梅次監督は、そういう母の小夜福子を念入りに描いている。私にはちょっと興味のあるところだ。

 石原裕次郎はデビュー以来1950年代に絶大な人気を誇ったらしいが、保守階層の一部からは「不良」として危険視されたともいう。そういう層を映画において象徴させたのが小夜福子であったと思う。そして青山恭二がクラシック音楽の作曲家として成功すると、涙を溢れさせて喜ぶのが小夜で、石原にも侘びを入れるのだ。石原はすでに暴漢連中に二回目の襲撃を受けて右手は使えなくなっていたが、もしそういうことがなく、石原がドラマーとして社会的に成効していたなら、小夜は青山に対すると同じ反応を見せただろうか、たぶんちがう。この辺、私には作り手が、社会に対して石原裕次郎や日活映画をその挑戦的な部分をけずって、まるく収めようというポーズをとったのではないかと勘ぐってみたくなるのだ。

 蛇足だが、安部徹という俳優がここでも、前回に紹介した「蘇る金狼」と同様の悪徳社長の役柄で出ている。二十年の時をまたいで達者なものだ。
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