大洋ボート

ボルベール<帰郷>

 ペネロペ・クルス(ライムンダ)は主婦。ある日、用事で長時間留守にして帰宅してみると、娘が表でずぶ濡れになって彼女の帰宅を待っていた。父(夫)が関係を迫ってきたのでナイフで刺し殺してしまったというのだ。「私がやったことにするのよ。」と娘に言い聞かせ、うろたえる様子をまったく見せないペネロペ・クルス。話はここから始まる。

 憤然とした様子をおしかくしながら娘に「あなたのやったことは間違っていない。」と言外に主張するかのようで、ペネロペ・クルスは落ち着きを見せて死体処理の行動にさっそくとりかかる。彼女自身も昔、同じ目にあったのだ。娘は実は実父との間にできた子供で、現在の夫は無関係である。娘も「父」にそれを死の直前に告げられた。そしてその昔、ペネロペは父と母を放火によって殺してしまったらしいのだ……。
 
 ペネロペは強い強いヒロイン像を見せてくれる。あまりにあっさりとしているので、その強さに鑑賞者はぼんやりとしてしまいがちであるが。

 床にひろがった血を拭いとらなければならない。トイレットペーパーを何枚も死体の周囲に重ねていく。毛管現象というのか、たちまち大量の血が紙に吸い寄せられて赤く染まっていく。血が白い紙に広がっていく様が映像的になんともうつくしいところだ。さらにモップでの拭き取り。死体は毛布にくるんで、休業中のレストランの冷凍庫まで運び込む。そこの経営者が休業することになって、鍵を近所のペネロペに預けていったのだ。

 それだけでは終わらない。映画のロケ隊の男が訪ねてきて三十人分の食事を依頼される。これもペネロペは引き受けてしまい、にわかに持ち主には無断でレストランを開業して、成功して大繁盛してしまう。ギター伴奏でスペイン民謡まで客に披露するくらいで、静かな興奮を鑑賞者に生じさせる。勝利の凱歌である。殺人や死体隠匿が法律的に違反であろうと、ペネロペには後ろめたさがまったくなく、娘も信頼してついていく。「落ち込んだときには仕事に打ち込め!」と人生相談の解答者が言っていたのを思い出したが、それ以上の強さを発揮するペネロペだ。落ち着きがあるうえにはなやかだ。

 このペネロペの強さに姉や友人ばかりか、隣近所の女性も引き寄せられるように集ってくる。そして死んだはずの実母まで亡霊のように出現してくる。母の姉妹と父との関係までが語られ、母とペネロペの和解にまで進展するが、このあたりはセリフ(字幕)に依存するきらいがあって煩雑である。姉の家に隠れている母を、そのおならの匂いで思い出すあたりは、ちょっと憎いエピソードだが。

 死体処理とレストラン経営という現在の二つの課題に、過去の忌まわしい事件にからむ人間関係の修復という課題が重なる。この三つの課題(他にもあるが)をそつなく、しかも前向きにかたづけていくペネロペ・クルスは女性の園のリーダーである。
関連記事
スポンサーサイト
    00:33 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://oceanic.blog70.fc2.com/tb.php/100-1fa0a947
プロフィール

seha

Author:seha
FC2ブログへようこそ!

カレンダー(月別)
09 ≪│2017/10│≫ 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
全ての記事を表示する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
リンク