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石の瞳

自作詩
11 /28 2020
石の瞳を
そんなに凝視めたって
何にもないよ
石の向こう側には
わたしがいてよくわかる
わたしではなく
石の瞳を通じての
別の人や心への連想なら
わかるけれど
わたし自身が凝視められるのと
区別がつかない
胡乱であって純であって
石の瞳とつりあって動かない
不動のあなたのその時間
わたしには耐えられない
凶暴化さえしかねないのだわたしは
あなたの眼差しに苛立って
わたしには何にもないのだ
今もこれからも
だから責めないでくれ
問わないでくれ
石の瞳の向こうから
出られないのだわたしは
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彷徨

自作詩
11 /22 2020
金色の藁が砂塵とともに舞い
そのなかの針の一本が
烏の嘴になる
のろのろ歩んで行った

学校の中庭に放置された
故障した発電機の焦げ臭さ油臭さ
妙に恋しさが募るが
だれもが立去っていく

亀の心をあたためて
だが亀の心とは何だ
ただ存在するというだけの外観
時間が無事に過ぎていく狡さ温かさ

果実を鷲づかみしてぎゅっと絞り
芯を取り出してみたかったが
予てよりわたしが遠望するものだったが
腫物の泥の海がつづく

侮蔑の光をシャワーのように浴びせる
帽子を被ったマヌカン
コールタールに浸かった三日月
ふやけているのは影だけではない

贋の感覚でさえ銀貨のように恋しかった
忘れるためには
大木に後ろから殴り倒されて
透明になった全てが解放された

国境線があらたに策定され
梯子の上に立つ人と蝗が顕在化した
わたしが見えますか傍の人
面白い遊びを教えてください

夜歩く

自作詩
11 /15 2020
窓に顎をのせる
もはや夏の夜の気まぐれな微風もなく
腹這いになって進む洞窟
行きどまりがあっさり見えて

窓に顎をのせる
果物屋の明りも消えて
オレンジの表面のてらてらの光沢も
砕かれたセメントの断面
わずかな切り傷を代償にして
納屋に寝に行く

悪魔に許諾をもらい
深夜に出没する中年男を尾行する
自分でも見て居られない貌は安心しろ
天国の鏡には映らない

電池の切れた懐中電灯がわたし
洗剤の泡をだらだら尻から漏らしつづける
その痕跡を見て人々は驚くだろうか
何が起こっても責任はない
ポケットのなかの碁石を親指でこする

赤い扉

自作詩
11 /07 2020
焔が扉を舐め尽くす
周りの壁は無くなり
焔だけになり
焔が大きい壁となる
鬣を揺らして
笛が風を吸い込み
焔の扉のやや上部にへばりつくミミズ
焔から逃れようとして
赤くなったり黒くなったり
燻り焦げつくミミズ
だが燃え尽きないミミズ
悔恨のように体を捩り
もはや追いつけない悔恨のように
わたしと焔とは距離があって
わたしを巻き添えにはしなかったが
あそこへは行けなかった
叫びは無かった
叫びはあとから造られようしたが
焔によって再び遮断された
さしだされた半透明の手も
水の鑿であとから造られようとしたが
さらに透明になって見えなくなった
ただ眼差しだけがあった
焔の向こうにあなたが居て
焔のこちら側にわたしが居て

眺望

自作詩
11 /01 2020
階段をのぼりきると
広場だった
何処までも突き抜ける晴れわたった青空に
鳥がばら撒かれたゴマ粒のように乱舞していた
カーニバルのピカピカの管弦楽とおおぜいの人々の
ざわめきとひしめきのなか
ぼくの顔見知りの人々も何人かたむろしていた
ぼくが階段をのぼりきると同時に
彼等とぼくは互いに気づき合った
それまで彼等は
お互いに話したりもしていた様子だが
手持無沙汰のようにも
何かを待ち受けるかのようにも見えたが
すると空がいきなり降下してきて低い天井となり
蒸し風呂の息苦しさの部屋となった
彼等とあと残りわずかな人だけがそこにたむろして
今さら別誂えのカーニバルが始まるとでもいうのか
彼等はそのとき初めてぼくを「発見」したのだ
嘗て浴びせられたことのない
異様な眼差しをぼくに向けてきた
奇異な言い方と受け取られるかもしれないが
ぼくはかねてから誰にも「発見」されないであろうと
のんびり構えていたから衝撃だった
その前提のもと晴れわたった青空は
ぼくのなかで上辺を保っていたのだが
彼等はぼくに何を期待したのだろうか
何を恐れたのだろうか
ぼくは発見されたくはなかった
発見されたぼくとは何か
その新しさ迂闊さとは
ぼく自身にとってもすぐには呑み込めず
助けをもとめるように手を差し出すように
ぼくを見る彼等の眼差しに引き込まれたのだが
そこには鍛えられた焔があった
濃い桃色の肉の柔らかさがあった
無防備にさらけだされた穴があった
何故か無性に腹立たしくなり
髪を掻きむしりたくなったが
ぼくは情けなくも何食わぬ顔を装って遮断した
彼等がぼくのそんな短い時間内での変化を
何処まで知ったのかはわからないが
彼等に発見されない以前のぼくには
ぼく自身もう戻ることができなくなったことを
数日後に確信させられた
ぼくはもやもやした憎しみを抱えながら
何食わぬ顔を装って退場した
階段を降りて行った

seha

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