FC2ブログ

大洋ボート

観念と現実

  特定の観念にもとづく実践から離脱した場合、そこにあった高揚感やリズムがなつかしく、さらにそれだけを取りだして引き継ごうとしても不可能だ。なぜなら、たとえ高揚感やリズムのみを目的としたとしても、最初に目的とした観念に付随した高揚感やリズムであるからで、それを後景にしりぞかせたつもりであったとしてもそれを手段や梃としなければ、高揚感やリズムは再現できないからだ。
  つまり、特定の観念は自らの世界観と相反する現実とたたかっているので、その現場における緊張感が付随的に高揚感やリズムをもたらすことになるのだから、現場から離脱するとそれにともなって緊張感も衰退し、消滅する。くだんの観念に疑問を抱いたのか、それとも疲れたのか怯えたのか、離脱の理由はさまざまであろうが、現実にたいしての反抗する姿勢は消滅し、自己意識は衰弱を自覚せざるを得ない。そういう自己を奮い立たせるための嘗ての観念の運動下における高揚感やリズムへの追想なのだが、そこにはくだんの観念を俎上にあげて検討をくわえるという論理作業はまだない。その手前であろう。観念をもって相対した現実と観念から離脱したうえでの周囲の現実は、環境が変わろうとも本質的には同じである。そういう纏わり着くような現実に鬱陶しさをおぼえての高揚感やリズムへの懐かしさが自然に起こってくるのだが。
  またとりわけくだんの観念に虚偽意識がまつわりつく場合は、リズムや高揚感は腰折れたものに堕し、追想や感傷にとどまる。ただ、忘れまいと決意することは必然であり、許される。そこにしか生の充実感が無かったという自覚があるならば、それを追想によって繰り返すのも一興だからだ。さらには観念にたいする再検討においても「充実感」は付随してくる。

  現実世界はどこまでも纏わりついてくる。そこに鬱陶しさを感覚するのは、生来の資質にもよると思われるが、少なくともわたしにとっては運命的なのかもしれない。その鬱陶しさにたいして嘗て携えていた観念運動下の高揚感を持ち出して来て追想することによって慰めとすることも一興であろうが、一時しのぎに過ぎない。高揚感を十全にしようとするならば、別の観念に依拠しその運動下に自己を置いて、現実ときびしく対峙することによってしか実現されえないのだ。だがそれは現実にたいする激しい批判や憎しみが土台としてなければ成立しない。高揚感をふたたび獲得することそれ自体が目的ではないのだ。
スポンサーサイト
    11:01 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

近代天皇制・メモ

  江戸末期以前では、庶民が天皇の姿に触れることはほとんどなかったと思われる。また意識することもそれほどなかったのであろう。庶民にとっては支配者は徳川将軍であり、地元の藩主であった。それが明治になって忽然と天皇が姿を顕したのみならず、国家体制とともに同時的に畏敬しなければならない存在として庶民の前に大きく顕在化した。単に伝統の継承者でもなく祭祀でもなくなった。普段は御所の奥に引きこもった縁遠い存在ではなくなった。明治新体制の「統帥者」としてその中心に天皇は置き換えられたのだ。
  明治新体制は西欧諸国と対等の地位を確立するために国家的法体制を整備しなければならなかった。外交交渉ひとつとっても外国から見たとき国家の法的構図を明らかにしなければならなかった。そのために天皇を担ぎ出さなければならなかったが、天皇に無制限の権力を委ねたのではない。「絶対君主」ではなく「立憲君主」としてだ。徳川体制を打倒した以上、天皇以外にはこの役割を担いうる存在は無かったと思われる。天皇が絶対君主ではないということは、国家と法に従属しそのもとで制限を加えられる存在であるということだ。一方、天皇の宗教性は神話や神道にもとづいて無視しえないものだったので、国民(庶民)の前にその宗教性、宗教的権威を江戸末期よりもより鮮明にし喧伝しなければならなかった。仏教はじめ「八百万の神」が併存するという日本国において国家神道の優越性の定着が図られた。これは宗教界からのみならず、国民の側からも運動として澎湃として沸き起こった。「下からのファシズム」と呼んで差しつかえない性質のものだ。
  特に1930年代半ば以降の天皇機関説批判や国体明徴運動の席巻は、国民の多くの賛同がなければ成立しえないもので、アジア太平洋戦争にいたるイデオロギー的基盤が形成された。日清、日露戦争、第一次大戦、満州事変と日本は敗北したことが無かったので、国民意識としては奮闘努力を傾注すれば勝利をもたらされるという確信が勢いづいた。国民としてはかかる見通しをもっても仕方がないのではないかとわたしは思うが、それは軍部が彼我の正確な戦力分析を怠ったから、また間違ったからだ。戦を煽る軍を国民は信頼していた。
    10:44 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
プロフィール

seha

Author:seha
FC2ブログへようこそ!

カレンダー(月別)
02 ≪│2018/03│≫ 04
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
全ての記事を表示する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
リンク