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大洋ボート

屋根の下


高温高湿の屋根の下
他人がときどきは往来する
土で踏み固められた道

短躯の中年男
ランニングシャツとニッカポッカと地下足袋
左手に鎌を携えて歩み去る

鋭い一瞥をおまえに投げて
ぼんやりと立っているだけだから
おまえはそこに居ないのも同然

用済みの太陽のように
うす白く光る井戸がある
覗いてみたい誘惑に駆られる井戸がある

籾殻と枯草と乾いた泥にまみれた
低い屋根と壁に凭せかけられた農機具がある
触れてみたくて歩み寄る


廃工場には風
瓦礫と鉄屑に埋もれた
車座に並べられた椅子のいくつか

その一つは人が身体を埋めて間もなく
不揃いに光る
風が一掴み二掴み過ぎてもの問う

靴で地面を掃うと水たまりが出現する
アメンボは居ない
青空は映らない

スレート屋根の破れ目からふりそそぐ
うす紫の日光の縞模様
嘗てコンクリートの階段が設営されて

人々はぞろぞろ上って行った
刃をぶつけあって勝鬨を鳴らしながら
顔を見合わせ話しながら昇天した

  
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    10:20 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

赤い花

屋根の下でも花は咲く
花弁の赤色は明瞭だとしても
削られたように葉のない茎
病気のように白くしかも異様に長い茎はどうか
意志の樹液をたっぷり充填して
横臥したくて地面すれすれに傾く
花弁の中心のくしゃくしゃは
人々にやたら凭れかかるようで
顔そむけたくなる
泣いているのか嗤っているのか座りが不安定で
いまだ満足に到達しない演技
見て見ぬふりする自己陶酔の板に着かぬ演技ではないか
顔そむけたくなる
何処へ行こうとするのか
結局は何処にも行かないのか
だがそれらは数メートル横に移動した
おまえのもうひとつの視界から見られた錯覚であるともいえる
反り返った刃の屏風に閉じられた
受け入れられているようで実は
他人から不信を買いつつあるのではないかという
おまえの小便臭い孤独の
自信喪失の反映だ
だがどうかと思える
病気のように白く異様に長い茎は
おまえの錯覚とやらを突き破ってふらふら伸び上がり
ダンス音楽に合わせて腰を振って
屋根やら窓やらを超越して
泣きながら何処かへ帰ろうとする
演技では追いつけないので呆然と見守るしかない
あこがれに対するあこがれ
うつくしさを初めてのように懸命に理解しようとする凡庸
おまえは帰巣者の群れと夕陽を窓越しに眺める


    10:29 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

飛行船

飛行船に惹かれて
顔見知りの男が消えた
路上に捨てられたマスクのように
目配せを残したまま 

飛行船が舞い戻ってきた
蚊のように小さくなって
長い毛むくじゃらの足を引き摺って
血をぽたぽた滴らせて

ぼくは大きい煎餅食うしかなかった 
傘よりも好都合だった
何も考えなくてよいと思った
頬にいやらしい白い湿気と火を感じた

縮小しつつあるものがあった
ぼくはなお走りつづけた
砂利か宝石か人肉か
何を踏んづけているかわからなかった

泣き顔で懇願するものがあった
灰色の雨が路上を汚した
肉のなかで動物の骨がじたばたした
ぼくは走るのを已めた

記念碑がでっちあげられそうだったので
飛行船を解体しなければならなかった
ぼくは焚火の輪に加わった
例の男が隣にいた


    12:00 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
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