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大洋ボート

夜空

背の低いビルディングには
帽子は無い
さらに背の低いビルディングにも
リボンは無い

翼の無い鳥がゆらゆら

人間の腰に似た軟らかい物質を押した
さらに ぼくら
箪笥やら車輛やら機械やらを押した

翼の無い鳥がゆらゆら上下運動

夏の夜の灼熱のなかの異臭
その指針を 不可解さを読みとれないのなら
いつの日かぼくら
復讐を遂げなければならないのだが 

星々が輝きを増し涎を垂らし 数珠繋ぎになる
その見覚えある眼差し
親しい人々の上にゆったりと定着する
親しい人々には金輪際似合わない眼差し

数珠繋ぎになった星々が
縞馬の股を大きく広げて異臭を降らせる
見たことの無い地図が
節くれだった指によって開示される

怯えたのではないが
汗と垢と塵を愛したが 指針を読みとれなかったのなら
ぼくらのたたかいは
随分の後方で終始した

翼の無い鳥がゆらゆら

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    10:10 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

眸のなかで

あなたの眸のなかで
錠前の閉じる音がした
ぼくは発見された

あなたによってぼくが発見され 次いでそれに促されて
ぼくはぼく自身を発見した と云っておこうか
衝撃だったそれは
二番目だったということもあるが
ぼくはぼく自身に興味がなかったから
ぼくという人間が
ぼくのなかで居るのか居ないのか
極めて曖昧だった
摩滅をむしろ厭わなかった
あなたに近づくことが
石鹸を泡に換えるように
自分を無化することに繋がると何処かで思っていたから
逆に云い換えてもいい
自分を無化することが たとえばあなたに近づくことだと
別に固有のあなたを欲情したのではなく

あなたのなかで
ぼくはどんな像を結んだのだろうか
汚穢にイカれた獣だったか
束の間に視認された焔の尻尾だったのか
その瞬間においては想像しなかった
後々ふりかえることはあっても
その瞬間においては想像しなかった
胸底から噴き上がってきた溶岩にうながされて
ぼくはあなたを憎もうとした
あなたのなかのぼくの像を壊滅しようとした
つまりは あなたにさらに近づこうとしたのだが
ぼくはぼく自身の憎しみの意想外なほどの
原始的などす黒さ強靭さに 今さらのようにたじろいだ
ぼくは引き下がらざるをえなかった
惹起されたその瞬間のぼくの像をも 
あなたは焼き付けたはずだ
二番目に焼き付けたはずだ

あなたの眸のなかで
錠前が開く音がした
ぼくはあなたによって発見された
    09:39 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

雨のなかで

白い雨
白い横顔
物問いたげな眸

白い雨のなかで
ピンク色に染まっていた汗
わたしの汗 あなたの汗

傘はなくても平気
道に迷っても平気
行き止まりでも?

広場の噴水の 雨の中のパフォーマンス
裾広がりの紫のドレス
天使のドレス

おそるおそるだったか
受け入れる用意はしたためていたのか あなたは
聖書なんかポケットに忍ばせて

わたしには答えがない
ここまでやって来れてわかった
行き止まりなら

    07:00 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

夜の街

夜の街が クローゼットに見えた
狭く熱い場所
ちらりと見やった 蚊の標識を
舌打ちはしなかった

誰かを押し込もうとしたのか
身代わりにさしだそうとしたのか
誰が わたしが?

夜の街が 巨大な縞馬の胴体に見えた
降下してくる その裏側のあからさまの地図
偶然を装った必然であったろうか
目脂のなかの 目配せ

怯んで まるくなった獣の背
身代わりにさしだされる寸前だったのか
誰が わたしが?

明瞭に拒否したのでもなかった
疲れてもいはしなかった
ただトイレに行きたくなった
わたしは 誰かと入れ替わった?

    10:43 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

部屋

錠前は熔け
蜂の巣のかたちになり
やがて透明になり
閉じ込められている白い蛾
わたしの記憶の糸屑

飴は舌で転がされる
口のなかの曇天を
凧のように飄々と泳ぐだろう
冬は冴え冴えとするだろう

部屋は開け放たれた
先程まで人は居たようだが
人の匂いだけが残存する
ぬくもりと かすかに異臭がする
蝋燭は燈らない 

部屋は部屋でありつづける
秋は秋に直面しつづける
    06:28 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

過去

ふてぶてしさの残り滓
隣家
時間の少し外れたところにあって
覗き見
皮膚を引っ掻きにくる銀箔
何食わぬ顔をして歩み去る人影
唾液

ふてぶてしさの残り滓
火花
時間の少し外れたところにあって
改竄写真
ささくれ立つ
屏風の八重歯
肘と腕でしがみつく梁の灰色
蜜は
ストローで吸い上げられる
    07:12 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
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