大洋ボート

扉の前で

すでに変貌がはじまっていた
霧が熱くながれ
釘や肉が
斜めにゆっくり落ちる流動体に混じり
人が任務ありげに動いていた

想像する人にとってその世界は
あまりにも惨たらしくかつ固定的だったので
夢のなかで片足を入れたこともあって
またぞろ参加する気にはなれなかった
だからこその扉一枚隔てた
向こう側に追いやったのだが
肝試しに似ていた

首から茸が生える
堕落する あまりに永い棒の時間帯
われわれの日常の挨拶に似てやしないか
霧が造物主の顔をして
釘や肉がだらけた主張を繰りかえす
変貌してしまう扉の向こう側
さびれてしまった
想像する人だけが売れ残った
われわれの日常の挨拶に似てやしないか

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    22:27 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

夜空にかかる顔

微風さえ囁きかけてきて闇は均質である ほのあたたかくさえある 何処までも気概の直線を延伸できる気がする その既定の方向に身を委ねて蝶のようにふわふわと飛んでいけたら死と幸せを一度に掴み取れるかもしれないなどと一瞬願ってみることもごく自然な成り行きでなんら咎められるいわれはない あの雲ひとつなくあっけらかんと晴れ上がった空がわれわれをやれるところまでやってやろう  やってやれないことはないという気にさせたように だが巨大な岩礁がある われわれの身の回り前後左右にあるのではなくそのまっただ中にわれわれは閉じ込められている 別に頭蓋骨が締め付けられもせず血が流れもしないのは気泡があちこちにあってそのひとつにわれわれが閉じ込められているからで その気泡のひとつもまたあまりに巨大なのでその終わりつまり岩礁がふたたびはじまる地点もとおすぎて視認できない そのリアルな風景も目にすることはない まして気泡を内包した岩礁全体が何処で終わるかその表面がどんな相貌か 晒す空間はどんな表情か 星は瞬くかなどと空想してみてもはじまらない 気がとおくなるだけだ だからこそ何処までも伸び広がる闇と錯覚するのもごく自然な成り行きといえるが また気泡内で棲むことの幸せを感得してもなんら咎められるいわれはないが 肝心なことは延伸しようとするあるいは既に延伸させてしまった後にわれわれが忘れてしまった 諦めてしまった直線とそこに纏わりついた情愛やら羽根やら腸やらのもろもろを収束することだ巻き戻すことだ 

闇とみえるものに向かって直線と気概を外へ延伸させるのではなくその中心部 岩礁とその内部の気泡の二重の中心部に位置すると仮にも見做されるわれわれ自身に立ち戻ること 中心部の芯部に直線と気概を向かわせることが闇そのものの解明にはるかに繋がるのではないかとの希望をでっちあげるのだ 勿論無謬性・良質性ばかりが引き上げられるのではない 語るに落ちる 語るに憚られることがわれわれの軌跡には無数にあって 涙や歓びよりも先に突きつけられるものがあって たとえば腐ったバター こわれた車輪 後悔に後悔をかさねても修正不可能でどんどんずれて行って人間ではなくなるのではないかとの危惧の水面に顔を浸さざるをえなかった局面など 激しい静電気のようにわれわれを狼狽させ 顔がひん曲がるかと思えるほどにわれわれを紅潮させるが また地団太踏むことにも疲れ飽き飽きさせられるが 無謬性・良質性がまったくないのではないとかたくなに信じ込みたい だが全体を継承できるものではない 腑分けして良質性のみを取り出して未来に道連れにすることなど言葉のうえではありえてもきわめて困難である あまりにも入り組んでいてあまりにも瘴気が立ちこめていてわれわれを後ずさりさせる それがごく自然な反応であって ましてやあっけらかんとして晴れわたった空などに戻れるわけもない すべてを岩礁を視認するという抽象的未来に委ねて進んで行ったはよかったが 多少のことはやれたとしてもやれるところまでしかやれなかったのだから しかしわれわれ自身の能天気を思い出すこと 忘れた快感の紐を探り出すように 無性に思い出したくなることもごく自然な誘惑である 血にまみれたわれわれの顔の断面図が天空に大きく掲げられるときには 罪と汚辱の厚い皮膚の下にあるしぶとい憧れから目をそらすことも困難であるから 

    07:24 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

約束の場所へ

約束の時間には遅れるが
待っていてくれる人はいない
約束の時間には遅れたが
待っていてくれた人は
待っていたことさえ
忘失の屑籠に投げ捨ててしまったので
ことさら非難されることもない
紙風船をふくらませたり
自傷行為にも似せて
部屋中を転げまわることもない
約束の場所はいつもある
影のように寄り添ってくれる
数百メートル先に用意されていて
鬱蒼とした森のなかの太陽
扉が開きっぱなしの映画館
わけのわからない映像が
滝のように垂れ流されつづけて
わたしはすでに奥深く歩み寄っている

おまえの微笑みは見ちゃいられないんだよ
黄色い葉っぱのようなお人好しと
未整理な愚劣の地図
何かを信じ込んでいるポーズ
気持ちよさそうじゃないか
おれは気持ち悪い
どんなことにもついていけると
窃盗で手に入れたぴかぴかの鎧のように
自負と覚悟のほどを撒き散らすが
家族に囲まれた幸福な父なのか
おれが相手だからそんな態度を取れるんじゃないか
おまえ一旦は後退したことは事実だろうが
それを無かったことのようにして
語ろうとしないのは腑に落ちない
無難なコメントくらいが関の山
おまえが語ろうとしないのは語れないからだ
それでもヒントと合鍵は隠し持っているという自信と希望
ちゃんと顔に書いてるぞ ナルシストめが!
おれを相手にするときの四畳半の優越感
若さとありあまる命がぷんぷん匂うじゃないか
ちなみにおまえよりももっと
匂わせる奴をおれは何人も知っているがね
おまえ一旦は後退したことは事実だろうが
廃墟が同時に希望でありうる場所に立った
ひとつの時代がおまえにそういう課題を与えた
おれにも胡瓜にもたやすく想像がつくが
自慢の種にすることじゃない群れだよ四畳半だよ
おれにも世に言うところの良心くらいはある
灯台を小さくして掌にのせて
まずはつき合わせることが礼儀のつもりだったが
おまえはおれのそういう志向を見抜いた
おれは腰が低かった
それだけで満足して酔いの舟にたゆたうばかりで
会話をすすませることを放棄する
おれが話す場面じゃないんだ馬鹿が
リラックス気分を長引かせるじゃないか
帰郷して山焼きの煙を愉しむように
おれにはおまえに追随する用意がなくもなかったががっかりだ
おまえは新しい仲間にはなれない
どうしてかな?ととぼけて問いかける
お人よしと愚劣のどんぐり眼も
おまえ自身ほどにはつき合えない飽きが来る
小便とわずかな血で描かれた地図
苦笑させるぜ
おまえはおれの良心と礼儀を侮辱する
おれなどいなくても露ほども痛まないと嘯きたいんだろう
おれは孤独だ孤独だと撥ねのける
それもだれかの物まね
ひとつの時代がおまえのそういう悲喜劇をつくった

待っていてくれた人はいなくなった
待っていてくれた人は死んだ
わたしは歩むことをやめない
歩むこと自体ですでにその人の味方になる
わたしはわたしでなくなる入れ替わる
砂が熱くなって飴のように曲がり
握りしめろと教唆する
約束の場所に向かって
わたしは歩むことをやめない
今も影のように寄り添ってくれる
待っていてくれた人
亡骸の抜け殻
わたしは語らない歩むときも歩まないときも
歩まないわたしのほうが人々にはよく見えるだろう
鬱蒼とした森のなかに太陽を探しに行く
扉が開きっぱなしの映画館の
わけのわからない映像の洪水のなかに
亡霊となってさまよう待ってくれている人
その目配せに出会いに行く
    07:20 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

    解明されて解明されてなお、にじり寄らなければならないのか。窓から首をさしだすように。青空の上澄み液を呑み干すためではない。認識を固め高めるための実感が足りないとでもいうように。嘗ての悪食への共感を復活させるように。仲間同士の目配せも借りて。そのとき人魚の跳ねる尾鰭。二番目の故郷を僭称させる。解明されて解明されてなお、にじり寄らなければならないのか。窓から首を何食わぬ顔でさしだすように。駆け出す靴音、遅れを取りもどそうとして。あっけなくも折れる鳥の脚。
  街の底からふつふつと沸きあがり停滞する霧、窓と首筋を侮蔑的に舐めてくる犬の舌の霧は、たとえば風力計の回転が示す天候の循環などではなく、わたしの肉体の深部に宿った棘で、そこから瀰漫した窓の外の仮像。それでも窓から首をさしだす。前例を踏襲する儀式のように、他に方法を知らぬかのように。どうにも解釈に困って扱いかねて忘れかけられている廃屋の記憶。それでも棘は軽微、まだまだうぶだから、はじめからやり直すという芝居めいたものをわたしなりにでっちあげて、実感の復活にいたずら半分に邁進するのか。それでも棘は軽微、それでも他人事のように霧に向かって上ついた気分で窓から首をさしだし、間抜け顔を人目に晒し。これらははじめての営みではないということにおいて、わたしにとっては大部分「解明」されているのであって。
  霧のなかの熱い粒。貨物船。その熱さを握りしめる覚悟を閃光のように問われる。惨劇にも似たあるいは惨劇がうすめられた霧の熱さの幹。粒のひとつひとつ。骨と肉がばらばらになってそれでも共通の意思に支配されるように痴呆となって闊歩する。紙の柱の群れ。それら霧のなかの幻影と、霧のなかの実態とにわたしは異様に接近しつつもどうしようもなく隔離されるのか。たぶん、わたしの意思が働いている。まるで意識がそっくり入れ替わったように、霧のなかの棘と肉と骨と紙の柱が合体したひとつの大きな滑らかな肌を撫でる。宇宙を見あげて丁寧に撫で接吻する。恍惚をもとめて。しかしそれでいいのか。恍惚のすぐ近くにさらに恍惚があるのかは「解明」されていない。わたしは滑落したのか、詐術にとっくに刺し貫かれたのか、それともとおい幻を子供のように憧れるのか。儀式に過ぎないのか。
    14:20 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
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