大洋ボート

ラッシュ/プライドと友情

 F1レースでトップを競い合うドライバー二人の話。実話がベースになっているそうだ。出演はクリス・ヘムズワース(役名ジェームス・ハント)、ダニエル・ブリュール(同ニキ・ラウダ)そのほか。
  ドイツで開催されたレースの前後のエピソードが印象に残った。折からの悪天候のため、レーサーや運営者が会議をもって、レースの決行か中止かを取り決める場面。ニキ・ラウダは中止を主張するがハントは決行派で、結局は多数決で決行が決まる。ハントのほうがレーサー仲間に人気があって、リーダー的な存在としてあつかわれていたようだ。一方ニキはこのレースで事故を起こし、瀕死の重傷を負ってしまう。ニキの負傷に自責の念を抱くハント。ようやく病癒えたニキが痛々しい顔のまま記者会見をひらいたとき、ハントもその席に居た。そして、下品な質問をした記者を追いかけていって殴り倒す。ここはやるなあ、と思って少し熱くなった。さらにハントはニキに会い、謝罪しようとするが、ニキは<君がトップになった(別のレース)ことが僕の闘病下での希望になった>と答える。余人にはわからないが、一頭地を抜きん出た者同士の相互尊敬とは、ああこういうものなのかと教えられた気がした。競争意識は土台にあっても、そのうえで互いに引っ張り合い、高め合うのだ。最近話題にのぼっている冬季オリンピック・フィギアスケートでの浅田真央とキム・ヨナのライバル関係もこのようなものだったのかと思った。
  映画としては、特に目新しさはないか。レースの描写は短いカットの数珠つなぎで、せかせか感をかきたてる常用手段だが、こういうやりかたも今や古くなっている気がする。レース外では、二人の結婚(離婚)やレーサーになった経緯、さらにはスポンサー探しなど盛りだくさんであるが、つめこみすぎて、総じてダイジェスト的になってしまったのではないか。最後までゆるみなく軽快に突き進んでいくのはさすがだという評価もできるかもしれないが。ニキが得意とする車体改造の場面などはじっくりと掘り下げて見せてもらいたかった。
  ★★★
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門田隆将『狼の牙を折れ』

狼の牙を折れ: 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部狼の牙を折れ: 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部
(2013/10/24)
門田 隆将

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  1970年代に起きた「東アジア反日武装戦線」による一連の爆弾事件の全容を、その発端から犯人逮捕による終結にいたるまでを、主に警察捜査陣の奮闘を中心にして描いたノンフィクション。遺族となった方々の無念と痛憤にもふれられる。日本社会を震撼させた丸の内三菱重工本社ビル爆破事件が起きたのは1974年8月30日で、死者8人、重軽傷者376人の犠牲者を出した大惨事となった。以降、翌年の5月に犯人グループが一斉逮捕されるまでに東京・西新橋の三井物産館、東京・日野市の帝人中央研究所など計8件の爆破事件が起きた。
  報道にふれたとき、ああここまで来てしまったな、というのがわたしの受け止め方だったと記憶している。犯人に共感できなかったどころか怒りを持ったことも勿論である。と同時に首をすくめたいような、逃げ出したいような後ろめたさにも見舞われた。60年代後半の高校生時代わたしは過激派に属していたからで、反権力志向は名分上犯人と共通していた。運動から離脱して何年も経過していたので政治分野への関心はうすれていたが、活動していた頃の身体の火照りやポーズはまだ持続していて、それはわたしにとっては謎であるがゆえに、忘れないうちに考えを重ねて自分に向けて結論を得たいと思っていた。そんなときにこの惨事が起こってしまった。以前のわたしがもっといびつになり、もっと悪に傾斜して拡大再生産されたと見做したことも、妄想としてあったかもしれない。70年代は学生運動衰退の時代だったが、関心ある人々のある部分にとってはそれゆえもっと大きな流れをつくりたいと夢想したのかもしれない。また衰退どころか、反権力闘争は真っ盛りであると誤認するがゆえに攻撃力を未曾有な規模にしたのか。ただこの類いのわたしの回想や犯人への近接感は本書とは無縁である。寄り道になってしまった。著者門田隆将は犯人の行動と思想をきっぱりと否定して深入りしない。それでいい。
  三菱重工事件では現場から収集された証拠物件がトラック10台分もの量に達したそうだ。分析の結果、そこから爆弾に使用された材料がつぎつぎにつきとめられて同一物が再現製作され、爆破実験まで行われた。だがそれが犯人像に直結するわけではない。警視庁公安部では中核派、赤軍派はじめ小グループにいたるまで過激派各セクトへの監視を事件以前から厳重に遂行していたが、有力な手がかりはえられなかった。そこで行われたのが「東アジア反日武装戦線」の犯行声明文の分析である。また、三菱重工事件以前に出回っていた爆弾製造教本『腹腹時計』も俎上に上げられた。(この年の春に『腹腹時計』は警察によって差し押さえ処分)そこにある思想的特徴をわりだして過激派諸セクトとの関連の有無をあぶりだそうとする。わたしはまずここで舌を巻いた。過激派文献の研究のために警視庁極左暴力取締本部にシンクタンクがつくられ、そのメンバーの一人である若い優秀な刑事が『腹腹時計』から「窮民革命論」を見事に抽出した。犯行声明文にも同質の思想が書かれていた。過激派の多くは労働者階級を革命の主体とするが、くだんの理論では、その主体は、通常の労働者よりもさらに劣悪な待遇を押しつけられる日雇い労働者いわゆるルンペンプロレタリアートでなければならないとする。日本の労働者は生活の向上によってもはや革命への意欲を喪失している。さらにこれにくわえてアイヌ民族、琉球人、在日朝鮮人等を合流させなければならないと説く。「窮民革命論」はマルクス・レーニン主義者よりもアナキストに近接する理論である。
  アナキスト・グループといってもあまたある。現に、1971年12月に起きた土田警視庁警務部長(当時)宅の爆弾事件は「反日武装戦線」とは別のグループの犯行とされた。(逮捕された被告はのちに無罪となる)おそらくは虱つぶしに監視対象としたのだろう。そのなかに浮上したのがアナキスト系の「レボルト社」という出版社で、関連者一同の身元調査を行った結果、犯人グループの佐々木規夫と斎藤和(のどか)が浮上した。この二人を捜査陣が注目したのは、北海道警が追跡している挙動不審の若者二人組と人相が似ていたからだ。1972年10月北海道で起きた2件の爆弾事件の前後、二人組は北海道に痕跡を残していた。だが佐々木と斎藤が犯人グループかどうかはまだ不明だ。二人が、今からふりかえるとようやくのように捜査陣の監視・尾行下におかれたのは年が明けた75年の1月からである。そこから5月の一斉逮捕までの期間、刑事の面々は「血のにじむ」ような職務行動に従事しなければならなくなるのだが、闘争心旺盛であったようで、著者はそれを盛り込むことを忘れない。
  尾行の定式については本書にくわしく書かれているが省略。勿論刑事一人ではなくグループで行なう。対象者の行動の逐一を確認しなければならないのだが対象者に気づかれるのは厳禁で、そのおそれが生じたときはやむなく打ち切ることもあるという。佐々木は職場と自宅アパートとを往復するだけの日がほとんどで、捜査は空を切ることが多かったが、粘り強い追跡の結果犯人グループの数少ない集まりがとらえられてそのメンバーすべてがさらに監視・尾行対象になっていく。「反日武装戦線」リーダーの大道寺将司もそのなかにいた。わたしは刑事が切歯扼腕したであろう局面に二度出会った。尾行を中止したり対象を見失ったりした後に、近隣の地で爆破事件が起こったことである。尾行対象者が実行犯であることを推測させるのに十分であった。佐々木をはじめとするメンバーに張り付いている刑事たちにとっては、彼らが犯人であるという勘は不動になりつつあったが、確たる証拠が押さえられない限りは逮捕にふみきれないのだ。この無念さや焦燥感はまさに「現場」そのものの匂いで、想像を超えるものがあるのだろう。
  直接証拠を採取することができたのは三菱重工事件からかぞえて7件目の東京銀座の韓国産業経済研究所爆破事件の際である。爆破のあとに現場に散乱していた紙片が、浴田(えきだ)由紀子が捨てたゴミ袋のなかの紙片と一致するという鑑定結果がえられたのである。浴田は斎藤和と同棲中だった女性。だがここからもう一つ関門がある。捜査陣の狙いは斎藤と浴田のみならず佐々木、大道寺はじめ「東アジア反日武装戦線」のメンバー全員を同時逮捕することにあった。だが斎藤・浴田以外においては、公平に見て証拠能力が弱い。一方、あまり検挙が遅れるとマスコミも嗅ぎつけてくるどころか、犯人にも情報が漏れるというジレンマがある。そこで登場するのが逮捕状請求の名人といわれて頼りにされた刑事である。(過激派文献分析で定評のある刑事とは別の人)丁寧で説得力ある文をものにすると評価されている人であったらしい。徹夜もザラであったという膨大な請求文書の作成は2週間以上かかったと記されている。韓産研爆破事件が起こったのが75年4月19日、逮捕状請求書が完成したのが正確な日時が記されていないが、おそらく5月上旬。そこからさらに検察庁にも根回しをする。通常なら警察の逮捕状請求で検察に話をすることはなく、警察単独で裁判所に「粛々」と提出されるというから並々でない体勢であろう。裁判所にプレッシャーをかける意味合いもあったのか。東京簡易裁判所に警察官が赴くさいには検事2名も同行した。さらにこの間、4月28日には一連の最後の事件「間組江戸川鉄橋工事現場爆破事件」が起きている。ストレスのつのること頂点に達しただろう。
  わたしは映画「ゼロ・ダーク・サーティ」を思い出した。オサマ・ビン・ラディンの行方を探索するCIA女性職員が、ついにその隠れ家を発見し、上司に報告して急襲の許可をえようとするが、証拠がとぼしいためになかなかOKが出ずに、懸命の説明・説得をするというもの。大きい組織が一挙に動くのには時間がかかることを教えられたが、この逮捕状申請の件にもあてはまるのだろう。
   他にもさまざまなことが記されている。家庭の経済的制約のために大学進学をあきらめて警察に就職した人が捜査陣のなかには多く、爆弾犯は言うにおよばず、学生運動全体への軽蔑と憎しみが大いにあった。また逮捕当日、サンケイ新聞が情報を得て朝刊に大々的にスクープ記事を載せるという。逮捕執行は午前8時頃だったので朝刊はそれ以前に犯人の目にするところとなるやもしれず、不測の事態が起きうる。土田警視総監はサンケイの担当デスクに記事差し止めをもとめて頭を下げに行った。果たして記事は掲載されたのか。さらに逮捕直後、犯人の一人は携帯していた毒物を嚥下して自殺。また何年か後には、赤軍派のハイジャック事件による人質交換要求のために佐々木、浴田らが釈放されて赤軍派の手に渡った、等々。
  捜査に携わった警察の人々の尽力は賞賛するに値する。すでに退職して久しい彼等に著者は丁寧な取材を行い、忌憚なく語らせた。80歳を超えた人が多いが、達成感はあったのだろう。一方、遺族の方々の悲しみは消えることがない。わたし個人にとってはこの事件もふくめて60,70年代はいまだに謎が残る。謎に向き合うことに非力であったのか。
    23:22 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

フランス軍中尉の女(1981/イギリス)

フランス軍中尉の女 [DVD]フランス軍中尉の女 [DVD]
(2004/08/02)
メリル・ストリープ、ジェレミー・アイアンズ 他

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  メリル・ストリープが二つの顔を見せる。すなわち撮影進行中でやがて完成される映画のなかの女優としての顔と、映画の外のプライベートの顔である。勿論実際のメリル・ストリープのプライベートではなく、あくまで映画としてのそれだ。両方において共演者ジェレミー・アイアンズとの不倫関係にあるのが眼目で、なかなかおもしろい構造になっている。
  考古学者ジェレミー・アイアンズはイギリスの海辺の小さな町に化石の発掘調査のために滞在する。時代は19世紀中ごろ。そこで題名の「フランス軍中尉の女」と呼ばれて噂されている女ストリープに出会う。噂によればストリープはくだんの中尉の愛人だったが、中尉は戻ってこず、ストリープは中尉への思慕のあまり港の突堤にときどき立ち尽くす。気がふれたようなそのたたずまいをアイアンズも目の当たりにして引かれていく。地元の富裕層の娘リンジー・バクスターと婚約したばかりだというのに。そのときのストリープのコスチュームは頭巾も含めて全身が黒色。バクスターが白に近い明るい色のコスチュームであるのと対照的だ。何不自由なく育って裏表のないお嬢さんよりも、暗さや狂気の気配をただよわせるストリープにアイアンズが引かれていくのはわかる気がする。それは未知で誘惑的な世界だ。ストリープがどういう内面を抱えるのか、字幕を追わなければならず厄介だが、保守層に嫌われることの「悪」や「狂気」にかえって一時的な安定感を見出すようである。不安定のなかの安定として。
  メリル・ストリープは町の人やジェレミー・アイアンズに自分の姿を見せびらかすようで、ふてぶてしい。それに密会の手紙をバクスターの家でアイアンズに渡したりで、大胆だ。またアイアンズの前から突然行方をくらましてわがままそのもの。映画の進行がスムースで自然にストリープに視聴者は引かれるが、ストリープはそれを十分に意識してか、どっしりとかまえる。一方の映画外のストリープはうってかわって「不倫」であってもまるで後ろめたさはない。映画の共演者として時間を共有するなかでの親しさの延長であり、一時的な遊びと割り切っている。この二つの顔を瑕疵なく演じきって、メリル・ストリープはさすがといわなければならない。ジェレミー・アイアンズは逆に映画内でも映画外でも真剣であり、ストリープへの執着が強く、同じ一つの顔である。
  イギリスの町の風景も風光明媚だ。海があって緑が豊かで、19世紀らしく、家畜や馬車が道路にひしめく。また、DVDは映像の悪いものも多いがこのソフトはそうではない。
  ★★★★
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