少女の情景

少女がやってくる
赤いワンピースを着て
山村の赤茶けた道をあるいてくる
少し傾斜した道を
みどりの急斜面と切れ込んだ川に
はさまれた道をあるいてくる
赤いワンピースを着て
少女がやってくる
頬はこんがりと焼けている

壁一面の窓
窓の向こう側は濃いみどりの樹木
樹木と窓のあいだには
圧力ある空気
水のようにはりつめた空気
笛の音さえちぢこまり
蛇のぬけがらになってしまう
悪意をふくみながらも悪意そのものを知らない
水のような空気のなかの
さらに逃げまどう水

今 そいつがあふれだす
窓ガラスをつきやぶってあふれだす
桟が交差するあたり
毒々しいカンナが穴から顔を出すようにして咲く
リスがおお急ぎで巣をつくり
逃げまどうガラスの破片をついばんでは集める
ガラスの破片にうつったカンナ
ガラスの破片にうつったリス
大きな手ににぎられて
皺くちゃになった金箔からこぼれる数本の髪
空気の光 水の光 
散乱する部屋 氾濫する水
しかしながら窓はかろうじて窓であることを保ち
せまい空間に白い顎を出して突っ立ち
頭と四肢を壁につっぱって立ち
少女が大写しになって窓を揺れて横切る
少女が窓のなかをやってくる

赤いワンピースを着て
少女が山村の赤茶けた道を歩いてくる
少し傾斜した道をやってくる
バス停留所がある

00:58 | 自作詩 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑