存在の耐えられない軽さ(1988/アメリカ)

存在の耐えられない軽さ 存在の耐えられない軽さ
ダニエル・デイ・ルイス (2006/01/27)
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 1968年の旧チェコスロバキア。トマシュ(ダニエル・デイ・ルイス)はプラハに住む医師。ある日、手術のために小さな町に出張するが、そこでテレーザ(ジュリエット・ビノシュ)とめぐり会う。トマシュにひとめ惚れしてしまったテレーザは彼を追いかけて、プラハへ行く。だがトマシュはもてる男で自由奔放な異性関係を満喫していた。サビーナ(レナ・オリン)という画家とは以前から関係がつづいていたし、他の女性にもつぎつぎと手を出していた。テレーザはやがて、彼のそんなだらしなさに気づくが、結婚してしまう。おりしも自由化を目指す「プラハの春」が最高潮に達していたときだったが、ソ連軍がそれを蹂躙しようとして、戦車とともにプラハに大挙押し寄せて来る……。

 欲張った映画だ。男女の三角関係のうえに、政治的動乱まで描こうとしているが、後者はマスコミ報道で接した印象以上のものはない。古いニュースフィルムと映画用に撮影された事件の様子がたくみに合成されているが、その腕前は今日ではめずらしくはない。上映時間も3時間近くで、長すぎる。

 だが役者はいい。ジュリエット・ビノシュは純朴で一途な地方出身の娘という役柄に見るからにぴったりであるし、レナ・オリンも都会的に洗練された雰囲気を身につけている。そのうえ、気だるさのなかに愛情への飢えを秘めていることもわかる。ダニエル・デイ・ルイスも、女にもてることはこういうことかもしれないという、一見自信過剰と傲慢の雰囲気を発散するなかに節度がちらちら見える気がして、男からみても何とも不思議な人物像だ。

 いいなあ、と思った場面は、写真家志望のテレーザが、サビーナに懇願してヌード撮影をするところ。撮影が進むにつれて二人はみるみるうち解けあって笑い、そして涙する。セリフでの説明がないからこそ、その意味が直截に伝わってくる。同じ男を愛してしまった、だがその男は、どちらの女ともさらに関係を続けようとする、このままではたまらない、私たちはどうしたらいいかわからない、だがそれでも私たちはその男がやはり好きだ、という女二人が同じ情念に絡め取られていることの相互認識であり、相互の憐れみだ。私は妻妾同居という言葉がよぎったが、女性二人はそんなことで難問が解決するとも思わないだろう。

 原作(ミラン・クンデラ)は知らないが、三角関係ははげしい諍いに発展するすることもなく、いかにも映画らしく甘く、夢のように解決する。その後、プラハの春の終焉の影響もあって、トマシュは医者ではいられなくなるが、自信過剰のジュリエット・ビノシュの面構えにはいささかの変化もない。

23:40 | DVDで見た映画 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑