段ボール箱
03/17/2007 (Sat)
1
そぼ降る雨の中で
レインコートを着て立つ男
存在感はきわめて希薄で
黒い短冊のようにも見えて
周囲の山肌に溶けいっても不思議でない
足下からややはなれた位置にある段ボール箱にも
関心を示す様子はない
輪郭によって覆われた中味はまして知らぬ
非所有であることによって
取り扱い責任からも免れている
帽子の深い庇によって
斧の機関車の軋みも聞こえぬ
そぼ降る雨の中道に面した納屋の陰で
2
生まれてきたことの是非を
生まれたきたのちの行ないの罪状を
他人に問い糾すことなど想いも寄らぬ
自分でさえ持てあますのだから
人のことなんてどうでもええ手が回らぬ
やるべきことはあったかもしれぬが
何もやらないで今日まで来てしまった虚ろ
音のない飛行機が全身を占拠して
ただただ直線の移動あるのみ人生って長い
身丈よりすこし大きい
それでも約束はまもらねばならぬ生きられぬ
約束から放免されるとぐったりして
何もやらないやらなくていい河馬
赤とんぼがかすめるだけだ
3
動きだす段ボール箱
斜面でもないのにずれるぶきっちょな移動
生き物か電動玩具かそれとも
神の見えざる手の仕業か
男の足下にやってきてすがるように這いのぼる
男は驚きもしないし喜びが零れる風でもない
だがじれったさのなかから邪険な眼差しが煌めく
湯気のたつような中心の血の赤だ
動物本能剥き出しの怒りの心性がはしなくも暴露され
サッカーボールのように蹴飛ばした
行いとは他に関係すること以外の何ものでもないが
男はその自覚をはげしく侮蔑し
侮蔑したことすら瞬時に忘れる肉体労働者
道に転がる段ボール箱
トラックに轢かれぺしゃんこになる段ボール箱
何もないああ何もない
かさばるものの瓦解もあふれる液体も
何もない何もない
皮のようにぺしゃんこになる段ボール箱
「人間の肉体だってああなってしまうんだ」
もう終わってしまっているという自覚が目覚める
だが果たして何が終わってしまったんだ?
そぼふる雨の中 男は煙草をふかす
そぼ降る雨の中で
レインコートを着て立つ男
存在感はきわめて希薄で
黒い短冊のようにも見えて
周囲の山肌に溶けいっても不思議でない
足下からややはなれた位置にある段ボール箱にも
関心を示す様子はない
輪郭によって覆われた中味はまして知らぬ
非所有であることによって
取り扱い責任からも免れている
帽子の深い庇によって
斧の機関車の軋みも聞こえぬ
そぼ降る雨の中道に面した納屋の陰で
2
生まれてきたことの是非を
生まれたきたのちの行ないの罪状を
他人に問い糾すことなど想いも寄らぬ
自分でさえ持てあますのだから
人のことなんてどうでもええ手が回らぬ
やるべきことはあったかもしれぬが
何もやらないで今日まで来てしまった虚ろ
音のない飛行機が全身を占拠して
ただただ直線の移動あるのみ人生って長い
身丈よりすこし大きい
それでも約束はまもらねばならぬ生きられぬ
約束から放免されるとぐったりして
何もやらないやらなくていい河馬
赤とんぼがかすめるだけだ
3
動きだす段ボール箱
斜面でもないのにずれるぶきっちょな移動
生き物か電動玩具かそれとも
神の見えざる手の仕業か
男の足下にやってきてすがるように這いのぼる
男は驚きもしないし喜びが零れる風でもない
だがじれったさのなかから邪険な眼差しが煌めく
湯気のたつような中心の血の赤だ
動物本能剥き出しの怒りの心性がはしなくも暴露され
サッカーボールのように蹴飛ばした
行いとは他に関係すること以外の何ものでもないが
男はその自覚をはげしく侮蔑し
侮蔑したことすら瞬時に忘れる肉体労働者
道に転がる段ボール箱
トラックに轢かれぺしゃんこになる段ボール箱
何もないああ何もない
かさばるものの瓦解もあふれる液体も
何もない何もない
皮のようにぺしゃんこになる段ボール箱
「人間の肉体だってああなってしまうんだ」
もう終わってしまっているという自覚が目覚める
だが果たして何が終わってしまったんだ?
そぼふる雨の中 男は煙草をふかす
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