ヘンダーソン夫人の贈り物

 未亡人となったジュディ・デンチ(ヘンダーソン夫人)が、その後の人生をどうやって暮らそうかと思い悩む。すでに未亡人となった友人は編み物などの趣味をすすめるが、性分に合わない。そこで無謀にも閉鎖になった劇場を買い取ることになる。富裕層ならではの贅沢だ。ショウビジネスの プロであるボブ・ホスキンスを支配人として雇い入れ、歌と踊りにヌードをまじえたレビューを連日公演するまでにこぎつける。1937年にはじまり、第二次大戦まっただ中の時代まで公演はつづけられる。舞台はロンドン。

 死に赴こうとする兵士たちで埋め尽くされた客席。その歓声と、舞台のダンサーやヌーディストとの一体感は『フラガール』を思わせる。ジュディ・デンチやボブ・ホスキンス、それに舞台に立つ人々は得意の絶頂であり、誇らかだ。連日の空襲もものかは。これを定着させただけでも価値はあるが、この映画はそれにだけとどまらない。ジュディ・デンチの甘い甘い夢が奥底にキラリと光るのが、いい。彼女は第一次大戦で息子を喪ってしまった。その遺品にはヌード写真がはさまれてあった。死んだ息子のような若者にヌードを見せてやりたい、という望みがかなえられる。また支配人のボブ・ホスキンスとの運営をめぐる確執。彼女自身の淡い恋。これには不意をつかれる。恋を忘れかけたヌーディストにファンの若い兵を紹介したりと、余計なこともする。

 このようにジュディ・デンチのなかに大きな欲望と小さな秘やかな欲望が同居することが、映画の構図そのものとなっていて、奥行きを見事につくっている。アニメと写真をまじえたオープニング・クレジットも楽しい。年末に上質のエンターティエメントを見ることができて、ちょっといい気分になった。

14:50 | 映画館で見た映画 | comments (0) | trackbacks (1) | edit | page top↑